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IASR 44(7), 2023【特集】新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 2023年5月現在

(IASR Vol.44 p99-100:2023年7月号

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスである重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、コロナウイルス科ベータコロナウイルス属に分類され、約30,000塩基からなる1本鎖・プラス鎖RNAゲノムを持つ。

国内外の発生動向

COVID-19は、2020年3月に世界保健機関(WHO)によりパンデミック状態にあると発表され、流行が続いている。2023年6月1日のWHOの報告(2023年5月28日時点)によれば、累計患者数767,342,575人、累計死亡者数6,938,207人である(https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---1-june-2023(外部サイトにリンクします))。2023年5月4日にWHOは、COVID-19の国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)の解除を決定したが、COVID-19の疾病負荷を把握するために入院や死亡者数のサーベイランスによる監視を加盟国に促すとともに、ゲノムサーベイランス体制の強化をあげている(https://www.who.int/publications-detail-redirect/WHO-2019-nCoV-Policy_Brief-Surveillance-2023.1(外部サイトにリンクします))。

国内における発生動向は、厚生労働省のオープンデータによると、2020年1月16日~2023年5月7日(2023年5月9日現在)に報告された検査陽性者(陽性者)数は33,803,572人、死亡者数は74,694人であった(図1)。2022年9月26日より感染症法に基づく医師の届出の対象を限定した運用が全国でなされてきたが(IASR 43:271-272, 2022)、2023年5月8日からは感染症法上での取り扱いが「新型インフルエンザ等感染症」から定点報告対象の「5類感染症」に変更されたことを受けて対策も変更され(図2)、全国約5,000カ所のインフルエンザ/COVID-19指定医療機関からの報告となった。これを受けて新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)の運用が停止され、2023年第19週から感染症サーベイランスシステムに移行して、他の定点把握対象の5類感染症と同様に、集計・還元が行われている(感染症発生動向調査週報ダウンロード2023年)。

ゲノムサーベイランスと感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される変異株の出現

国内においては、COVID-19発生初期からSARS-CoV-2のゲノムサーベイランスが行われてきた。国立感染症研究所(感染研)、地方衛生研究所(地衛研)、検疫所等では協力してウイルスゲノム解析を実施し、ウイルスゲノム情報を使用したクラスター対策や疫学情報とあわせてのモニタリングに活用されてきた。

2020年末から、感染・伝播性、毒力(virulence:病原体が引き起こす感染症の重症度の強さ)および抗原性等に影響を与える可能性がある遺伝子変異を有するSARS-CoV-2変異株が出現し、感染者数増加の優位性(growth advantage)を有する変異株によって流行株が置き換わる現象が観察されてきた。2021年11月に発生したB.1.1.529系統(オミクロン)については、亜系統による置き換わりが観察され、異なる系統間での組換え株も数多く観察されてきた。世界的にはワクチン接種や感染による中和抗体からの逃避や、感染者数増加の優位性が示唆される亜系統が複数報告されている。日本国内では、2022年6月ころよりBA.2系統からBA.5系統への置き換わりが進行し、9月以降はBA.5系統の亜系統であるBQ.1系統、BN.1.2系統、BN.1.3系統などの検出割合の増加がみられたが、特定の亜系統が主流となる傾向はみられなかった。2023年2~3月にかけてXBB.1.5系統、XBB.1.9系統の検出割合の増加傾向がみられたが、4月以降はXBB.1.5系統の検出割合が横ばいとなり、XBB.1.16系統の検出割合の増加傾向が優位となっている。

国内においては、オミクロンの流行拡大後は、最大で全国5,000件/週を超えるウイルスゲノムが登録されてきた。5類感染症に移行した後も、都道府県ごとに週100件程度を目安に各自治体においてゲノム解析を実施し、地域のゲノム解析結果を地衛研で集約したうえで、感染研COG-JPシステムに登録、保管するように要請されている。感染研は登録されたゲノムデータを集計・解析して還元している。また、2021年3月から実施してきた国内の民間検査機関2社で検査された全国の検体を利用した変異株の発生状況のモニタリング体制も、200検体/週をめどにゲノム解析を実施し、特定の亜系統の検出割合の推定等を行っている。検疫においては、検疫所で採取されたSARS-CoV-2陽性検体(検疫検体)に対してウイルスゲノム解析を試みてきた(本号3ページ)。

今後のCOVID-19発生動向の監視体制について

2023年5月8日より定点サーベイランスとしてCOVID-19の発生動向が監視されている。さらに全国の約53,000の医療機関が登録されているG-MIS(医療機関等情報支援システム)にはCOVID-19による新規入院者数やICU(intensive care unit)入院者数あるいは、ECMO(extracorporeal membrane oxygenation)または人工呼吸器管理中の患者数、その他医療従事者の欠勤者数などが登録されている。これらの情報を利用して週報にまとめて還元している(本号4ページ)。また、他のウイルスとともに下水中のSARS-CoV-2ウイルスゲノム量を監視する下水サーベイランスとして、NIJIs(New Integrated Japanese Sewage Investigation for COVID-19)プロジェクトによる技術研究が行われている(本号5ページ)。COVID-19の発生動向の監視としては検査陽性率だけではなく、実施された検査数とともに把握することが重要と考えられる(本号7ページ)。

COVID-19サーベイランスであるHER-SYSにおいても入院や死亡などの転帰に関する追加報告が可能であるが、その実態は不明である。そこで報告例の重症化や死亡に関する追加の情報提供を自治体に求めたところ、5,573例の死亡例が探知され、HER-SYSでは死亡例ではなかった例も探知された(本号8ページ)。このHER-SYSには、医師の届出の対象を限定した全国運用がなされるまでに約2,100万例超が登録されている。このようなビッグデータを用いた定期的な情報還元に関する際の課題と教訓をまとめた(本号10ページ)。

WHOは、COVID-19を引き続き重要な健康課題であり長期的な対応が必要であるとしている。これまでにSARS-CoV-2オミクロンの中で、感染者数増加の優位性を示す亜系統による置き換わりが観察されているように、SARS-CoV-2は変異を続けており、今後もゲノムサーベイランスにより、新たな変異株の出現の監視を継続する必要がある。さらに発生動向を監視するために、定点サーベイランスに加えて、新規入院者数などを把握することにより、国内での流行に対するアセスメントを続けていくこととなる。その際には、下水サーベイランスなど異なる指標を組み合わせることの意義は高いと考えられる。またビッグデータとなったHER-SYSの活用に関する課題と教訓をまとめることにより、新たなパンデミックへの対応に資するものと考える。

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