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IASR 43(12), 2022【特集】新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 2022年11月現在

(IASR Vol.43 p271-272:2022年12月号)(2022年12月28日黄色部分改訂)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスである重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、コロナウイルス科ベータコロナウイルス属に分類され、約30,000塩基からなる1本鎖・プラス鎖RNAゲノムを持つ。

国内外の発生動向

COVID-19は、2020年3月に世界保健機関(WHO)によりパンデミック状態にあると発表され、以後、流行の波を繰り返してきた。2022年11月9日のWHOの報告(2022年11月6日時点)によれば、累計患者数629,627,951人、累計死亡者数6,580,793人である(https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/situation-reports(外部サイトにリンクします))。なお、WHOは加盟国による報告数を基に継続的に発生動向のサーベイランスを行ってきたが、2022年以降は検査体制の変化等により、報告数の解釈には注意を要すると記載している。

国内における発生動向は、厚生労働省(厚労省)のオープンデータによると、2020年1月16日~2022年10月30日(2022年11月2日現在)に報告された検査陽性者(陽性者)数は22,017,407人、死亡者数は46,635人であった。国内においてもCOVID-19は流行を繰り返し(IASR 42:135-136, 2021)、2021年8~9月には陽性者数が急増した(期間を“2020年第3週~2022年第44週”から、“2020年第3週~2022年第43週”へ修正しました:2022年12月28日)。なお、2022年2~3月と8~9月には、陽性者数がさらに増加し、2022年9月26日より、感染症法に基づく医師の届出の対象が以下に限定された:1.65歳以上の者、2.入院を要する者、3.重症化リスクがあり、かつ、新型コロナ治療薬の投与が必要な者または重症化リスクがあり、かつ、新型コロナ罹患により新たに酸素投与が必要な者、4.妊婦。「全数把握」としては、日ごとの「年代別の総数」のみの報告となった。

厚労省の「新型コロナウイルス感染症の国内発生動向(速報値)」

2022年9月20日時点(https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000992637.pdf(外部サイトにリンクします)(PDF:9.1MB))によると、報告された累積陽性者の男女比(男/女)は1.0、陽性者全体に対する年齢階級ごとの陽性者の割合は20代(16.0%)、次いで30代(15.5%)、40代(15.4%)、10代(13.8%)、10歳未満(13.7%)、50代(10.6%)、60代(6.0%)、70代(4.3%)、80代以上(4.1%)であった。2021年5月現在(IASR 42:135-136, 2021)と比較し、これまで男性にかたよった性差がみられなくなり、10代以下の陽性者が大きく増加した。特に2022年以降、性別・年齢分布は大きな変化を認めた(本号3ページ)。また、各年齢階級別にみた累積の死亡者数の陽性者数に対する割合においては、2021年5月現在と比較して減少し、80代以上で3.0%、70代で0.9%、60代で0.2%、50代以下の年齢群では0.1%未満であった。

ゲノムサーベイランスと感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される変異株の出現

国内においては、COVID-19発生初期からSARS-CoV-2のゲノムサーベイランスが行われてきた。国立感染症研究所(感染研)、地方衛生研究所(地衛研)、検疫所等では協力してウイルスゲノム解析を実施し、ウイルスゲノム情報を使用したクラスター対策や疫学情報とあわせてのモニタリングに活用されてきた(本号5ページ)。

2020年末から、感染・伝播性、毒力(virulence:病原体が引き起こす感染症の重症度の強さ)および抗原性等に影響を与える可能性がある遺伝子変異を有するSARS-CoV-2変異株が出現し、感染者数増加の優位性(growth advantage)を有する変異株によって流行株が置き換わる現象が観察されてきた。特に、B.1.1.7系統(アルファ)、B.1.617.2系統(デルタ)、B.1.1.529系統(オミクロン)が置き換わりながら流行を形成してきた。オミクロンについては、亜系統の置き換わりが観察され、異なる系統間での組換え株も数多く観察されてきた。世界的にはワクチン接種や感染による中和抗体からの逃避や、感染者数増加の優位性が示唆される亜系統が複数報告されている。一方、変異が共通の部位に集中する傾向がみられつつあり、ウイルスの収斂進化が起きているとの指摘もある。

これら変異株に対する対策として、わが国ではゲノムサーベイランスを強化し、実態の把握と評価に努めてきた(本号6ページ)。検疫においては、入国者の陽性例全例に対してウイルスゲノム解析を試み、また、国内においては、当初は各変異株に特徴的な変異をスクリーニングできるPCR法を実施し、陽性例は地衛研または感染研でウイルスゲノム解析を行ってきた。その後、陽性例の5-10%をめどとしてゲノム解析を行う体制を各自治体が整備してきた。オミクロンの流行拡大後は、陽性例の5-10%のゲノム解析数を確保することは困難になったが、最大で全国5,000件/週を超えるウイルスゲノムが登録されるに至った。また、2021年3月からは国内の民間検査機関2社で検査された全国の検体のうち、週当たり400検体(2022年4月以降は全国800検体)をめどにゲノム解析を実施し、変異株の発生状況のモニタリング体制も構築し、特定の亜系統の検出割合の推定等を行ってきた。

変異株リスク評価に資する実験室内ウイルス学的解析

新たな変異株が出現した際の公衆衛生対応策を立案するためには、変異株のウイルス学的な特徴等に基づいてリスクを評価する必要がある。ウイルスゲノム配列情報のみではリスク評価に必要となるウイルス学的特徴を把握することは困難であり、分離ウイルスを用いた実験室内ウイルス学的解析を行い、病原性(本号8ページ)と薬剤/中和抗体感受性(本号9ページ)等に関する情報を迅速に得る必要がある。このような解析は、ウイルス学に関する高度の知識・技術および適切な実験室を備えた研究室でのみ実施可能であるが、パンデミック下においては、世界中のウイルス学研究室において精力的にSARS-CoV-2研究が継続的に実施されており、その結果が迅速に公開され、変異株リスク評価の基盤情報として用いられている。一方で、査読前論文として公開された情報が多いことや、実験室の環境や使用する材料や実験系の違いにより異なる結果が報告されていることも少なくなく、情報の解釈には注意を要する。

COVID-19の監視体制について

COVID-19の発生動向の予測は困難であり、継続した監視体制が重要である。基盤的な監視体制としては、COVID-19の発生動向のサーベイランスが引き続き必要である。流行状況とリスク評価に応じて監視体制は今後も変化すると予測され、複数の指標に対するサーベイランスや複数の情報源を活用したサーベイランスが引き続き重要となる(本号10ページ)。新規陽性者数の動向に加えて、潜在・市中感染を反映する発熱等相談件数等を示す症候群サーベイランス(本号12ページ)や、検査目的種別の検査数と検査陽性率の監視(本号14ページ)等、補完的な情報も取り入れることにより、発生動向の解釈をより確信を持って行える、強固なサーベイランス体制となる。また、COVID-19流行下においては、人流や人々の不安度・リスク行動のデータは、人口集団としてのSARS-CoV-2の曝露機会の代替指標となり、状況把握の一助になった(本号15ページ)。

変異株モニタリングにおいては、感染・伝播性、病原性および抗原性等の変異株の表現型について、実験的、また疫学的な評価を継続し、リスク評価に応じた対策を実施していく必要がある。感染研では、ゲノムサーベイランスで見出された新たな変異株の分離・培養を行い、感染研で利用するだけでなく、迅速に国内外の研究機関に配布することにより変異株のリスク評価に資する実験室内ウイルス学的解析研究の推進に貢献してきたが、今後もこのような連携は重要である。一方、世界的にSARS-CoV-2の研究成果の情報発信は減少しつつあり、今後出現する変異株のウイルス性状に関する情報が得にくくなることも懸念される。

最後に、新たに懸念される変異株が出現した際には、積極的疫学調査を適時に行い、疫学的な特徴を明らかにし、公衆衛生対応と対策に繋げることが重要である(本号16ページ)。また、平時のサーベイランスとは別に、新規変異株発生初期の数百症例程度を対象とした臨床・疫学・ウイルス学的調査(The first few hundreds等)の検討も必要である(本号18ページ)。このように、発生初期に迅速に詳細な情報を収集可能にする体制は、今後起こり得る未知の新興感染症に対しても重要である。

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