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CRE感染症の治療

(IASR Vol. 46 p35-36: 2025年2月号)

カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(carbapenem resistant Enterobacterales: CRE)感染症の標的治療でβ-ラクタム系抗菌薬を選択する場合, カルバペネム耐性を惹起するβ-ラクタマーゼの種類によって, 治療選択肢が決定づけられる。

CREは, カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(carbapenemase-producing Enterobacterales: CPE)と, ESBLやAmpCなどの広域β-ラクタマーゼ産生に加えて外膜蛋白の透過性が低下することでカルバペネムに耐性化するカルバペネマーゼ非産生CRE(non-carbapenemase-producing CRE: non-CP-CRE)に大別され, さらにCPEの産生するカルバペネマーゼはAmbler分類に基づいてclass A, B, Dに細分化される。class Aの代表的なカルバペネマーゼであるKPC型であればセフタジジム/アビバクタム, イミぺネム/シラスタチン/レレバクタム, セフィデロコルが, class Dの代表的な酵素であるOXA-48-likeであればセフタジジム/アビバクタムとセフィデロコルが, class B(メタロ-β-ラクタマーゼ: MBL)であればセフタジジム/アビバクタム+アズトレオナムの併用療法とセフィデロコルがβ-ラクタム系の治療選択肢となる。

一方でレボフロキサシン, ST合剤, チゲサイクリン, アミカシンなどの非β-ラクタム系抗菌薬を選択する場合, カルバペネム耐性機序を考慮する必要はない。ただし, 特に非尿路感染や重症例の標的治療では, 一般的にβ-ラクタム系の静注抗菌薬が選択され, 非β-ラクタム系抗菌薬は経口薬への切り替えや外来治療の選択肢と捉えられることが多く, 特に薬剤耐性グラム陰性桿菌感染症における非β-ラクタム系抗菌薬の有効性のエビデンスは十分に揃っているわけではない。

日本で感染症法に従って届け出られるCRE感染症のうち, CPEによるものは毎年15-18%程度を占めており, 残りの82-85%程度はnon-CP-CREである1)。CPEの80-90%はIMP型, 次いでNDM型が多くなっており, 日本で分離されるCPEの90%以上がMBL産生菌である1)ため, これらに対してはセフタジジム/アビバクタム+アズトレオナムの併用療法, あるいはセフィデロコルが治療選択肢となる2)。ところで, MBLの中で世界的に最も分離頻度の高いNDM型CPE3)と比較して, 日本で分離されるIMP型CPEは, 前述の非β-ラクタム系抗菌薬への感受性率が比較的高い(≧50%以上)2)。さらに, 現在まで日本のCPE感染症はこれらの非β-ラクタム系抗菌薬を主体とした治療が行われて, 死亡率が~15%程度と報告されており4), この値は海外のCPE感染症で報告されている値と比して相対的に低い5)。したがって, これらの非β-ラクタム系抗菌薬も, 特に尿路感染や軽症例では選択肢となりうる。

日本のnon-CP-CREにおける新規β-ラクタム系抗菌薬の感受性率はセフタジジム/アビバクタムおよびセフィデロコルは95%以上, 次いでイミぺネム/シラスタチン/レレバクタムも70%程度であり6), これらの抗菌薬が治療選択肢となるが, ここでもCPE同様に非β-ラクタム系抗菌薬も治療選択肢となりうる7)

参考

  1. IASR 45: 129-130, 2024
  2. Kayama S, et al., Nat Commun 14: 8046, 2023
  3. Lutgring JD, et al., Antimicrob Agents Chemother 64: e00499-20, 2020
  4. Hayakawa K, et al., J Antimicrob Chemother 75: 697-708, 2020
  5. Duin D, et al., Lancet Infect Dis 20: 731-741, 2020
  6. Kayama S, et al., J Glob Antimicrob Resist 38: 12-20, 2024
  7. Ikenoue C, et al., BMC Infect Dis 24: 209, 2024
兵庫県立はりま姫路総合医療センター
 感染症内科 西村 翔


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