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宮城県内の保育施設におけるサポウイルスによる急性胃腸炎集団感染事例の集積

(IASR Vol. 45 p220-221: 2024年12月号

はじめに

サポウイルス(Sapovirus: SaV)はカリシウイルス科に属し、急性胃腸炎を引き起こすことが知られている1)。カプシドタンパク質領域の塩基配列が遺伝子型の決定に用いられ、ヒトでは、G1(G1.1-GI.7)、G2(G2.1-G2.8、G2.NA1)、G4(G4.1)、G5(G5.1-G5.2)の遺伝子型に分類される。しかし、流行状況に関する情報が少ないため、我々はこれまでSaVの集団感染事例と散発例の遺伝子型について調査を行ってきた2)。今般、宮城県内において、SaVが原因と考えられる集団感染事例の集積が確認されたので、その概要について報告する。

方法

2022年4月1日~7月31日の期間に、宮城県内(仙台市を除く)の保健所から感染性胃腸炎集団感染疑いとして23事例の便検体が搬入された。微生物検査は細菌検査およびウイルス検査を並行して実施した2)。real-time RT-PCR3)によりSaV遺伝子が検出された事例について、マルチプレックスRT-PCR4)を実施し、ダイレクトシーケンスにより遺伝子型を決定した。

結果

2017~2024年に当所で検査を行った集団感染事例数と主な検出ウイルスを図1に示した。過去2年の4月1日~7月31日に発生した集団感染事例は、2020年が0事例、2021年が4事例であり、2022年の23事例は近年の発生動向と異なっていた。23事例中18事例からSaV遺伝子(1事例はアデノウイルス41型遺伝子同時検出)、4事例からノロウイルスGII群遺伝子、1事例からアストロウイルス遺伝子を検出した。SaVの遺伝子型は、12事例からG1.1、4事例からG2.3、2事例からG1.1とG2.3を検出した(図2)。集団感染事例の発生施設は、すべて保育所や幼稚園など低年齢層であった()。全事例で確認された症状は嘔吐であり、他に下痢、腹痛、発熱、嘔気、頭痛と続いた。

考察

国内では2007年前後にG4.1、2012年前後にG1.2が流行し、それにともない大規模な集団感染事例の発生が報告されている5-8)。今回、宮城県内では大規模事例の発生は確認されなかったが、国内外で検出されている主要な遺伝子型であるG1.1や、近年検出数が増加しているG2.3が検出されており2)、今後も動向を注視する必要がある。また、他県では患者から複数の遺伝子型の検出報告があるが9), 本事例では確認されなかった。遺伝子型による年齢分布や症状の違いについては本調査では明らかではなかったが、調査を継続することで感染様式の解明に寄与していきたい。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により他の感染症の流行状況が変化していることから、感染性胃腸炎検出ウイルスの動向についても継続的なサーベイランスが必要といえる。

謝辞:感染症発生動向調査にご協力いただいている医療機関、保健所はじめ関係機関の皆様に感謝申し上げます。

参考文献

  1. Oka T, et al., Clin Microbiol Rev 28: 32-53,2015
  2. Sakagami A, et al., J Clin Virol 132: 104648, 2020
  3. Oka T, et al., J Med Virol 91: 370-377, 2019
  4. Oka T, et al., Arch Virol 165: 2335-2340, 2020
  5. 国立感染症研究所, IASR速報集計表 ウイルス 年別 胃腸炎ウイルス(2024年10月31日作成)
    https://nesid4g.mhlw.go.jp/Byogentai/Pdf/data96j.pdf
  6. Usuku S, et al., Jpn J Infect Dis 61: 438-441, 2008
  7. Yamashita Y, et al., J Med Virol 82: 720-726, 2010
  8. Kobayashi S, et al., Arch Virol 157: 1995-1997, 2012
  9. 高橋知子ら, IASR 43: 189-191, 2022

宮城県保健環境センター微生物部
坂上亜希恵 茂庭 光 小泉 光 大槻りつ子 木村葉子
鈴木優子 佐々木美江 山木紀彦

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