静岡市内で発生したサポウイルスによる集団嘔吐下痢症事例
(IASR Vol. 45 p219-220: 2024年12月号)
静岡市では、平成17(2005)年2月22日付け社援発第0222002号「社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について」(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta5127&dataType=1&pageNo=1(外部サイトにリンクします))に基づき、通知に定める基準を超えた感染症等の発生が確認できた場合は、市内事業所に対して報告を義務付けており、保健所が原因究明および感染拡大防止のために当該事業所の調査を実施している。調査の一環で市環境保健研究所に検体が搬入されると、まずノロウイルス(NoV)の検査を行い、NoVが搬入検体の過半数を超える検体から検出されなかった場合、サポウイルス(SaV)の検査を追加している。
検査法としては、SuperScript3(Invitrogen)を用いてランダムプライマー(6mer)により作製したcDNAを用い、病原体検出マニュアルサポウイルス(第1版(PDF:387 KB))記載のreal-time PCR法を実施している。real-time PCR法において陽性になった検体については、既出の検出マニュアル記載の方法もしくは、SV-F11/SV-R1およびSV-F2/SV-R2を用いたnested PCR法1)にてcapsid領域の一部を増幅し、得られた塩基配列からオンライン解析ツールBLAST(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi(外部サイトにリンクします))やNorovirus Typing Tool Version 2.0(https://www.rivm.nl/mpf/typingtool/norovirus/(外部サイトにリンクします))2)を用いて遺伝子型の判定を行っている。
2022年度に当市内こども園および小学校において、SaVを原因とする集団嘔吐下痢症が11事例発生した。検出状況について、表に示す。2022年4~6月に発生した7事例は、遺伝子型別不能(NT)であった1事例を除き、いずれも遺伝子型G1.1に分類された。2023年1~3月に発生した4事例は、いずれも遺伝子型G2.3に分類された。発生地域別にみてみると、検出された遺伝子型に地域差はなく、時期によって流行していた型が異なることが推測された。SaVの症状としては、NoVに類似しているが、下痢が優位との報告がある3)。当市で発生した11事例に関しては、嘔吐が24名(53.3%)に対し、下痢が19名(42.2%)と、嘔吐を呈する患者の方が多かった。遺伝子型別にみると、G1.1は嘔吐のみを呈する患者が9名(39.1%)に対し、下痢のみを呈する患者が11名(47.8%)であった。G2.3は嘔吐のみを呈する患者が10名(76.9%)に対し、下痢のみを呈する患者が1名(7.7%)であり、遺伝子型によって症状の違いがみられた。
SaVによる集団感染事例は、当所で統計を取り始めた2008年度から例年1-3事例であったことを考えると、2022年度はまれにみる流行であった。当所での年度別胃腸炎ウイルス検出数を図に示す。2022年度はSaVの検出数がNoVを逆転している。SaVの流行だけではなく、NoVの感染者数が少なかったこともその要因として考えられる。
また、当市では、2023年度にパレコウイルス(HPeV)が原因と考えられる集団嘔吐下痢症が6事例発生し、集団嘔吐下痢症事例の原因としては珍しいとされている4)HPeV-A3も検出された。コロナ禍を経て、様々な感染症が以前とは違う流行形態をみせている。今後も、変化していくであろう感染症の発生状況の実態把握をしていくべく、日々調査を継続していきたいと思う。
参考文献
- Okada M, et al., Arch Virol 147: 1445-1451, 2002
- 国立感染症研究所, 病原体検出マニュアル ノロウイルス(第1版), 令和元(2019)年6月(PDF:1,346 KB)(2024年10月22日アクセス)
- 田中智之, Medical Technology 36: 1393-1399, 2008
- 山元誠司ら, IASR 39: 203-204, 2018
静岡市環境保健研究所
浅沼理子 榎原広里 松下 愛