栃木県内で発生した集団感染性胃腸炎等から検出されたサポウイルスについて(2010/11~2023/24シーズン)
(IASR Vol. 45 p216-217: 2024年12月号)
サポウイルス(SaV)による集団発生の報告数はノロウイルス(NoV)よりも少ないが、幼稚園、保育所、学校、社会福祉施設など、あらゆる年齢層で年間を通して発生している1)。SaV感染症の症状はNoVによる症状とよく似ているため、病原体を特定するためには遺伝子学的検査が不可欠である1)。このため栃木県保健環境センターでは、集団感染性胃腸炎および食中毒疑いの検体が搬入された場合、すべての検体に対してSaVとNoVの検出を行い、保健所からの依頼に応じてその他の胃腸炎ウイルスの検出も行っている。本稿では、2010/11~2023/24シーズンにおけるSaVの検出状況およびその遺伝子型の推移を解析したので報告する。
2010/11~2023/24シーズン(ウイルス性胃腸炎の発生ピークが冬季であることから、1シーズンを9月~翌年8月までとした)に、宇都宮市を除く栃木県内で発生した集団感染性胃腸炎および食中毒疑い事例からSaVが検出された28事例を解析に使用した。SaVの検出はreal-time定量PCRおよびRT-PCR2,3)、NoVの検出は厚生労働省通知4)に記載のreal-time定量PCRにより実施し、その他の胃腸炎ウイルスの検出はRT-PCRおよびイムノクロマト法により実施した。ウイルスが検出された場合、ダイレクトシーケンス法でウイルスを同定し、遺伝子型を決定した。なお、SaVの遺伝子型はVP1領域の塩基配列を解読し、Norovirus Genotyping Tool Version 2.0(https://www.rivm.nl/mpf/typingtool/norovirus/(外部サイトにリンクします))により決定した。
シーズンごとのSaV検出事例数と遺伝子型の内訳を表に示した。2013/14、2018/19、2019/20シーズンを除く11シーズンにおいて検出され、2021/22シーズンと2022/23シーズンが最多であった。全28事例中24事例(85.7%)は集団感染性胃腸炎から検出され、発生施設の内訳は幼稚園または保育所が17事例(60.7%)で最も多く、社会福祉施設が5事例(17.9%)、小学校が2事例(7.1%)であった。その他4事例(14.3%)は食中毒疑いから検出された。
28事例のうち17事例(60.7%)では、SaV以外のウイルスが同一事例内で検出され、NoV G2が最も多かった(表には記載せず)。そのうち14事例は幼稚園または保育所、1事例は社会福祉施設における集団感染性胃腸炎事例であった。その他2事例は食中毒疑いであった。また、2015/16シーズン以降はすべて幼稚園または保育所における事例であった。
シーズンごとのSaVの遺伝子型の内訳は、G1.2が9事例(32.1%)、G1.1が8事例(28.6%)で多くを占め、次いでG2.3の6事例(21.4%)となった。2010/11~2012/13シーズンはG1.2が主に検出され、2021/22シーズンはすべてG1.1、2022/23シーズンはすべてG2.3であった。
この解析から、6割以上の事例が幼稚園または保育所において発生し、SaV以外の胃腸炎ウイルスが同時に検出されることが多い、という結果が得られた。これらの施設には、同時期に複数の胃腸炎ウイルスが存在しており、集団感染性胃腸炎を発生させていることが示された。
また、事例数は少なかったが、食中毒疑いからもSaVが検出された。これらの事例では、SaVが食中毒の原因ウイルスとして断定されていないものの、他自治体においてSaVによる食中毒が発生している5)ことから、本県においても警戒する必要がある。
シーズンにより検出されたSaVの遺伝子型は異なっていたが、G1.1とG1.2が多かった。日本を含む世界で検出されるSaVの遺伝子型はG1.1とG1.2が優位であり6)、今回の解析も 同様の結果となった。
全国的にSaVは検出数が少なく、流行状況には不明な点が多いため、今後も継続してデータを蓄積していく。
参考文献
- Oka T, et al., Clin Microbiol Rev 28: 32-53, 2015
- Oka T, et al., Med Virol 78: 1347-1353, 2006
- Okada M, et al., Arch Virol 151: 2503-2509, 2006
- 厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長通知, 平成15(2003)年11月5日食安監発第1105001号
- 辰己智香ら, IASR 40: 90-91, 2019
- Doan YH, et al., Jpn J Infect Dis 76: 255-258, 2023
栃木県保健環境センター微生物部
齋藤明日美 関川麻実 若林勇輝 江原 栞 永木英徳 鈴木尚子