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鳥・ブタインフルエンザウイルスのヒト感染事例の状況について

(IASR Vol. 45 p191-192: 2024年11月号)

鳥インフルエンザウイルス

A/H5亜型ウイルス

2023年9月以降、 家禽・野鳥・愛玩鳥等でのA/H5亜型ウイルス(N1、 N2、 N5、 N6、 N8NA亜型、 NA亜型不明も含む)による高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の発生が欧州、 アフリカ、 アジア、 北米、 中米、 南米から報告されており、 2024年3月には南極大陸の北端で野鳥からH5亜型HPAIウイルスが検出され1)、 オセアニアを除く世界中へさらに感染拡大している。NA亜型別ではN1が欧州31カ国/地域、 アフリカ6カ国、 アジア12カ国/地域、 北米2カ国、 中米1カ国、 南米3カ国で、 N2がメキシコで、 N5がアイスランド、 英国、 グリーンランド、 フェロー諸島、 ドイツ、 ノルウェー、 日本、 カナダで、 N6が日本と韓国で、 N8がドイツとエジプトでそれぞれ検出されている(2024年9月24日時点)2)。このうちN1、 N2、 N6亜型でヒト感染が報告されている3)(2024年9月27日時点)。

A(H5N1)ウイルスのヒト感染が、 中国で2024年3月に1例、 カンボジアで2023年10月に2例、 11月に2例、 2024年1月に3例、 2月に2例、 6月に1例、 7月に3例、 8月に1例、 オーストラリアで2024年2月に1例、 米国で2024年3月に1例、 5月に2例、 7月に5例、 8月に1例、 ベトナムで2024年7月に1例報告されている。2024年2月のオーストラリアあるいは2024年3月の中国におけるヒト感染例では、 インドあるいはベトナムでHPAIウイルスに感染した家禽に曝露した後、 それぞれの国に入国していたことが報告されている。A(H5N2)ウイルスのヒト感染は、 メキシコで2024年4月に1例が報告されている。A(H5N6)ウイルスのヒト感染は、 中国で2023年10月、 11月、 2024年4月、 5月、 6月にそれぞれ1例が確認されている3)。A/H5ウイルス(報告時点でNA亜型が不明)のヒト感染は、 米国で2024年6月に1例、 7月に4例が報告されている。これらヒト感染を起こしたA/H5ウイルスのHAのクレードは、 カンボジアとベトナムの事例では2.3.2.1c、 オーストラリアの事例では2.3.2.1a、 それ以外の事例の多くは、 2021年以降に鳥類で世界的に大流行している2.3.4.4bに分類されることが報告されている(一部でクレード決定に至っていない事例があった)。

日本では2023/24シーズンの2023年9月~2024年5月に、 A(H5N1)もしくはA(H5N2)ウイルスによるHPAIの発生が、 家禽で11事例(10県)、 野鳥・環境試料で156事例(28都道府県)、 飼養鳥で2事例(2県)が確認された2)(詳細は別報4))。なお国内において、 ヒト感染は報告されていない。

A(H5N1)ウイルスによる哺乳類感染は、 2020年以降は26カ国に拡大し、 2023年までの4年間で、 キツネ、 クマ、 ネコ、 イヌなどの陸生哺乳動物やカワウソ、 イルカ、 アザラシなどの水生哺乳動物など、 合計48種以上で感染が報告されている5)。さらに、 2024年3月には、 米国ではA(H5N1)ウイルスによる初の乳牛への感染事例が報告された6)(A/H5ウイルスの哺乳類あるいは乳牛への感染事例詳細については本号15ページを参照)。

A/H7亜型ウイルス

2023年9月以降、 家禽・野鳥・愛玩鳥等でのA/H7亜型ウイルス(N3、 N5、 N6、 N8、 N9 NA亜型、 NA亜型不明も含む)によるHPAIの発生が欧州、 オセアニア、 アフリカで報告されている。NA亜型別ではN5がドイツで、 N3とN8とN9がオーストラリアで、 N6が南アフリカで、 NA亜型不明がモザンピークでそれぞれ検出されている(2024年9月24日時点)2)

2013年3月に低病原性A(H7N9)亜型鳥インフルエンザウイルスの初のヒト感染が中国で報告され、 第5波(2016年10月~2017年9月)以降は、 家禽に対して高病原性を示すように変異したHPAI A(H7N9)ウイルスのヒト感染も報告された。2013年以降で1,568例のヒト感染、 616例の死亡例が確認されたが、 家禽へのワクチン接種開始による鳥インフルエンザ発生数の減少にともない、 2017年9月以降のヒト感染例の報告数は激減した7)。2019年3月の中国内モンゴル自治区での感染例を最後に、 ヒト感染例の報告はない(2024年10月3日現在)8)

A/H9亜型ウイルス

A(H9N2)ウイルスのヒト感染は2023年9月以降、 中国で11例〔2023年10月に四川省で1例、 11月に四川省で2例、 2024年1月に安徽省で1例、 2月に広西チワン族自治区と江西省と広東省と香港でそれぞれ1例、 5月に広西チワン族自治区で1例、 6月に1例(詳細不明)、 8月に広東省で1例〕、 2024年3月にベトナムで1例、 2024年1月にインドで1例、 2024年5月にガーナで1例が報告されている3)。多くは軽症例であったが、 中国における2例とベトナムおよびインドの事例では重症化した。2023年9月以前にもエジプト、 バングラデシュ、 インド、 セネガル、 オマーン、 カンボジアでヒト感染例の報告があり、 1998年以降のヒト感染は100例以上となった3,9,10)。現在もアジア、 アフリカを中心に家禽の間での流行が確認されている3)

その他の亜型ウイルス

2023年11月に、 中国安徽省でA(H10N5)ウイルスとA(H3N2)季節性インフルエンザウイルスに混合感染した63歳女性の感染例が報告された(2023年12月に死亡)3)。この患者は発症前にA(H10N5)ウイルスに感染した生きたアヒルを購入したことが判明している。また2024年2月に、 中国雲南省で重度の肺炎を呈した51歳男性から、 中国および世界で3例目となるA(H10N3)ウイルスの検出が報告された3)。患者は養鶏を営んでおり、 発症前に家禽および家禽関連環境に曝露していたことが判明している。これらA/H10ウイルスによるヒト-ヒト感染は確認されていない。

世界各地の家禽や野鳥からは様々な亜型の鳥インフルエンザウイルスが検出され、 ウイルス流行の拡大にともないヒト感染リスクは高まるため、 引き続きこれらのウイルスを注視していく必要がある。

ブタインフルエンザウイルス

ブタは、 ブタインフルエンザウイルス(IAV-S)に加え、 鳥やヒト由来のインフルエンザウイルスにも感染するため、 異なるウイルスに同時に感染した場合に遺伝子再集合体(A型インフルエンザウイルスの8本の遺伝子分節の組み合わせが異なるウイルス)を産出することがある11)。2009年にパンデミックを引き起こしたA(H1N1)pdm09ウイルスは、 北米で流行していたtriple reassortantウイルス(ブタ、 鳥、 ヒトインフルエンザウイルスの遺伝子再集合体)とユーラシアで流行していた鳥型豚系統A(H1N1)ウイルスとの遺伝子再集合体である12)。A(H1N1)pdm09ウイルスは、 世界各地でブタに再侵入し、 IAV-Sとの間で様々な遺伝子再集合体を産生している11)

2023/24シーズンは、 米国ではA(H1N1)v、 A(H1N2)v、 A(H3N2)vウイルスのヒト感染が、 それぞれ1例、 4例、 4例報告されている〔ヒト感染したIAV-Sは“variant(v)virus”と総称され、 亜型の後ろにvが追記される〕13)。その他、 2023年9月以降に、 A(H1N1)vウイルスのヒト感染がブラジルで1例、 スイスで1例、 ベトナムで1例(2024年6月に死亡)、 A(H1N2)vウイルスのヒト感染が英国で1例、 A(H3N2)vウイルスのヒト感染がカナダで1例確認されている(2024年9月27日時点)3)

日本では、 2009年以降にヒトからブタに再侵入したA(H1N1)pdm09ウイルスや、 A(H1N1)pdm09ウイルスと遺伝子再集合したA(H1N2)ウイルスやA(H3N2)ウイルスなどが現在も流行している14,15)。2019年にはA(H1N1)pdm09ウイルスのブタ-ヒト間の感染を疑う事例も確認され16)、 引き続きIAV-Sを注視していく必要がある。

参考文献

  1. WOAH, High Pathogenicity Avian influenza(HPAI)-Situation Report, 2024
    https://www.woah.org/app/uploads/2024/03/hpai-situation-report-20240319.pdf(外部サイトにリンクします)(PDF:661KB)(accessed 2024/10/3)
  2. 農林水産省, 鳥インフルエンザに関する情報
    https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/tori/(外部サイトにリンクします)
  3. WHO, Global Influenza Programme: Human-animal interface
    https://www.who.int/teams/global-influenza-programme/avian-influenza(外部サイトにリンクします)(accessed 2024/10/3)
  4. 農林水産省, 2023年~2024年シーズンにおける高病原性鳥インフルエンザの発生に係る疫学調査報告書, 2024年7月3日
    https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/tori/attach/pdf/r5_hpai_kokunai-153.pdf(外部サイトにリンクします)(PDF:853KB)(accessed 2024年10月3日)
  5. Plaza P, et al., Emerg Infect Dis 30: 444-452, 2024
  6. Peacock T, et al., Nature, 2024 doi: 10.1038/s41586-024-08054-z
  7. Shi J, et al., Cell Host Microbe 24: 558-568.e7, 2018
  8. Yu D, et al., Euro Surveill 24: 1900273, 2019
  9. WHO, Antigenic and genetic characteristics of zoonotic influenza A viruses and development of candidate vaccine viruses for pandemic preparedness
    https://cdn.who.int/media/docs/default-source/influenza/who-influenza-recommendations/vcm-southern-hemisphere-recommendation-2022/202110_zoonotic_vaccinevirusupdate.pdf?sfvrsn=8f87a5f1_11(外部サイトにリンクします)
  10. Cáceres CJ, et al., Viruses 13: 1919, 2021
  11. Ma W, Virus Res 288: 198118, 2020
  12. Garten RJ, et al., Science 325: 197-201, 2009
  13. CDC, FluView Interactive
    https://gis.cdc.gov/grasp/fluview/Novel_influenza.html(外部サイトにリンクします)
  14. Kobayashi M, et al., Emerg Infect Dis 19: 1972-1974, 2013
  15. Mine J, et al., J Virol 94: e02169-19, 2020
  16. Kuroda M, et al., Zoonoses Public Health 69: 721-728, 2022
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