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日本の輸入デング熱症例の動向について(2018年4月~2024年3月診断症例)

公開日:2024年8月29日

(IASR Vol. 45 p140-142: 2024年8月号)

背景

日本の輸入デング熱症例の動向は、 日本人渡航者の国外での感染リスクおよび国内感染事例発生リスク評価のための重要な情報である。デング熱非流行国である日本では、 継続的に輸入例が報告されており、 2014年には約70年ぶりの国内流行が発生した1)。輸入例の動向は、 渡航先の流行状況と流行地への渡航者数に影響を受けるとされている2)。日本人渡航者数は2020年1月以降の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行による渡航制限にともない大幅に減少したが、 2022年4月以降増加した。本稿では、 感染症発生動向調査において2018年4月~2024年3月までに診断された日本の輸入デング熱症例の動向についてまとめた。

方法

輸入デング熱症例を、 医師がデング熱と診断し、 感染症発生動向調査に届出した、 日本国外での感染と推定された者と定義した。2018年4月1日~2024年3月31日に診断された月別輸入デング熱症例数(2018年診断例: 2019年12月10日時点、 2019~2024年診断例: 2024年6月20日時点)および月別の国外への日本人総渡航者数の推移について記述した。期間については、 (1)COVID-19流行前の月別日本人総渡航者数が10万人以上の期間(以下、 渡航者数減少前: 2018年4月1日~2020年3月31日)、 (2)COVID-19流行下の渡航制限等で月別日本人総渡航者数が10万人未満で推移していた期間(以下、 渡航者数低調期: 2020年4月1日~2022年3月31日)、 (3)月別日本人総渡航者数が10万人以上に回復して以降の期間(以下、 渡航者数回復期: 2022年4月1日~2024年3月31日)に分類した。

結果

日本人総渡航者数は、 渡航者数減少前(37,383,671名)~渡航者数低調期(908,776名)にかけて減少し、 渡航者数回復期(15,240,590名)で増加に転じた。輸入デング熱症例は、 2018年4月~2024年3月に計997例が診断され()、 渡航者数減少前(666名)~渡航者数低調期(20名)にかけて減少し、 渡航者数回復期(311名)で増加に転じた。渡航者数減少前と渡航者数回復期では8、 9月に症例数が多く、 季節性を認めた。推定感染地域については、 全期間を通じてアジア地域の割合が最も高く、 次いで中南米・カリブ海諸国、 オセアニアの順であった()。一方、 国別では、 各期間で推定感染地域の分布は異なっており、 渡航者数減少前はフィリピンの割合(20%: 135/666例)が最も高く、 渡航者数低調期、 渡航者数回復期ではそれぞれインドネシア(50%: 10/20例)、 ベトナム(19%: 59/311例)の割合が最も高かった。

まとめ

輸入デング熱症例数は、 渡航者数減少前~渡航者数低調期に減少し、 渡航者数回復期で増加に転じており、 日本人総渡航者数の推移とおおむね同様の傾向であった。全期間で推定感染地域はアジア地域の占める割合が最も高かったが、 その要因として、 日本人総渡航者数が大きく変化しても、 アジア地域への渡航者の割合が依然として高く3)、 調査期間中アジア地域においてデング熱が継続して流行していたことが考えられた4)。アジア地域の中でも、 推定感染地域として最も割合の高い国は期間によって異なっていたが、 これは3期間における日本人渡航者の渡航先の分布や、 各国でのデング熱流行状況の変化を反映していると推測された。期間別の推定感染地域の分布の違いの要因をさらに検討するためには、 国別の渡航者数の推移や、 個人の感染リスク行動、 渡航先の流行状況等を考慮する必要がある。

COVID-19流行下の渡航制限による日本人総渡航者数の減少により、 輸入デング熱症例数は激減したが、 最近の日本人総渡航者数の増加とともに、 その数が増加しつつある。今後も輸入デング熱症例の動向を注視するとともに、 日本人渡航者や医療・公衆衛生従事者の対策に資する情報として還元を継続することが重要である。

参考文献

  1. 関 なおみ, IASR 36: 37-38, 2015
  2. Kasamatsu A, et al., J Epidemio l34: 187-1943, 2024
  3. JTB総合研究所, アウトバウンド 日本人海外旅行動向
    https://www.tourism.jp/tourism-database/stats/outbound(外部サイトにリンクします)
  4. WHO, Dengue Situation Updates 2024
    https://iris.who.int/handle/10665/375485(外部サイトにリンクします)

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