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越谷市内の飲食店で発生した腸管出血性大腸菌O157食中毒事例について

公開日:2024年5月29日

(IASR Vol. 45 p79-80: 2024年5月号

腸管出血性大腸菌(EHEC)はVero毒素を産生する大腸菌で、下痢、血便、腹痛を主症状とし、溶血性尿毒症症候群(HUS)等の重篤な合併症を発症すると後遺症や死に至るとの報告がある。

2023年11月に、関東地方の複数の自治体でEHEC感染症発生届が提出された。喫食調査から、患者は共通して越谷市内の飲食店を利用しており、当該施設が提供した食事を原因とするEHEC O157の食中毒と断定したため、その概要について報告する。

疫学調査

2023年11月14日、東京都内在住者から、越谷市内の飲食店を利用後に体調不良を起こしている旨の電話連絡があった。その後、11月15~24日に、近隣自治体からEHEC感染症発生届患者に関する調査依頼および情報提供が相次ぎ、最終的に患者は1都5県3市の13グループ14名(EHEC感染症届出13名、有症苦情1名)にのぼった()。患者の年齢は20~29歳が7名(50%)で最も多く、女性が9名(64%)であった。発症日流行曲線()から、患者の発生は11月6~15日にかけて認められたが、HUS等の重症者はいなかった。

患者14名の間に日常生活の接点は認められなかった。喫食調査より、14名は10月31日~11月12日に越谷市内の飲食店Aの利用が共通し、全員がハンバーグを喫食していた。14名中13名の菌株を反復配列多型解析(multilocus variable-number tandem-repeat analysis:MLVA)法で解析を行った結果、MLVA typeは13m0625ですべて一致した。患者の症状および潜伏期間はEHECによるものと一致し、患者の共通食は当該施設の食事のみであったことから、当該施設が調理、提供した食事を原因とする食中毒と断定した。

施設調査結果

1.調理方法について

当該店舗は、表面のみを炭火で焼き、中心部は十分に加熱していない状態でハンバーグを提供し、客が溶岩石プレートと固形燃料を使用して焼いて食べるセルフ焼き方式のレストランであった。

調理方法については従業員が客に「ハンバーグは銀箸を使って真ん中で2つに割り、割った面を下にして十分加熱してお召し上がりください」と口頭で伝えるのみで、客席および店内に掲示はなかった。さらに、十分な加熱についての具体的な情報提供もされておらず、2回目以降の来店客には客の求めに応じて説明を省略していた。

2.汚染経路の追求

ハンバーグは中心部が十分に加熱されていない状態で提供されていることから、ハンバーグの加熱不十分での喫食が本事例の原因と推定された。

患者が喫食した食品と同一ロットの食品の残品はなかったため、参考品として調査日当日の仕込み済みのハンバーグのタネを検査したが、参考品からEHECは検出されなかった。また、施設のふきとり検査および従業員検便からもEHECは検出されなかった。

仕入元である冷凍国産牛挽肉の加工所への調査では、従業員の体調不良や同様苦情は確認されなかった。

考察

従業員が客に説明している調理方法は、教育用マニュアルが存在せず、口伝で教育していた。患者への聞き取り調査では、従業員から受けた調理方法の説明として「お好みで焼き加減を調整してください」や「そのままでお食べいただけます」という回答もあった。また、この調理方法でハンバーグの中心部が十分加熱できるかの検証が行われていなかった。このため、十分な加熱についての情報が不足した中で、加熱用の牛挽肉で作られたハンバーグの焼き加減が客の判断にゆだねられ、加熱不十分な状態での喫食につながり、食中毒が発生した可能性が高いと考えられた。

保健所は行政処分後に当該施設の従業員に対して、令和5(2023)年11月16日付厚生労働省通知「飲食店における腸管出血性大腸菌食中毒対策について」等に基づき衛生教育を実施した。

本事例を受け、事業者が有効な加熱調理を実施することが基本であることを伝え、中心部まで十分加熱して提供するよう提供方法の変更を提案したが、既存の提供方法を継続したい意向があったため、再発防止のための改善策を十分講じるよう指導した。この指導により事業者は、調理方法を検証し、溶岩石プレートの温度を200℃、ハンバーグの厚さを1センチ程度まで小さくカットした後、両面を2分ずつ焼き、さらに返して1分焼く方法へと改善した。また、当該メニューが加熱用であることや、調理の際に中心部まで加熱する必要があること、加熱不十分の場合は食中毒の危険性があるため生では食べられないこと、等を盛り込んだ調理方法の掲示物を作成し、客席に設置した。保健所は、従業員が客へ説明する調理方法をマニュアル化するとともに、すべての従業員が正しい説明をするための教育と、教育訓練の定期的な検証実施を指導した。

今後も保健所は本事例を踏まえ、飲食店に対して適切な情報提供および加熱不十分な喫食が行われないための十分な注意喚起について継続的に指導する必要があると考える。さらに、消費者に対する食中毒予防の普及啓発についても、その重要性を改めて感じた。

謝辞:関係自治体、埼玉県衛生研究所、国立感染症研究所の皆様に深謝します。

越谷市保健所
滑川千恵子 長本圭司 村田雅美 石井公規

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