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IASR 45(2), 2024【特集】真菌症 2023年12月現在

(IASR Vol.45 p15-16:2024年2月号

真菌症の分類

真菌症は病原真菌が引き起こす感染症の総称で、病変の局在によって、表皮・粘膜面に病変が限局する表在性真菌症と、1つまたは複数の臓器病変、あるいは、播種性病変を形成する深在性真菌症の2つに大別される。前者には口腔カンジダ症、カンジダ腟炎、カンジダ皮膚炎などが含まれ、罹患者数は多いが一般的に重症度は低い。一方で後者は主として免疫不全患者に生じ、頻度は低いものの、重篤な病態を引き起こすことが多い。他にも真菌が原因となる病態としては、アスペルギルス属等によるアレルギー性疾患(気管支喘息・副鼻腔炎)や、アフラトキシン等のマイコトキシンによる中毒が挙げられ、これらも広い意味で真菌症に含まれる。

感染症法に規定される深在性真菌症

深在性真菌症の原因真菌は、健常者にも感染症を引き起こす高病原性真菌と呼ばれるものと、主として免疫不全患者に感染症を引き起こすもの(日和見感染症)に大別できる。多くの真菌は後者に属するが、前者に属する真菌の代表的な菌種として、クリプトコックス属や、主として海外の流行地域で感染し帰国後に発症する形式の輸入真菌症(流行地域が原因真菌ごとに限られることから地域流行型真菌症と呼ばれることもある)の原因真菌であるコクシジオイデス属、ヒストプラスマ属、ブラストミセス属などが挙げられる。これらの高病原性真菌のうち、感染症法に基づく届出対象疾患としては、コクシジオイデス症が4類感染症、播種性クリプトコックス症が5類感染症に定められており、コクシジオイデス症は診断後直ちに、播種性クリプトコックス症は診断後7日以内に全数届出が義務付けられている(それぞれの届出基準についてはhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kekkaku-kansenshou11/01.html(外部サイトにリンクします)を参照)。

コクシジオイデス症の流行地域は、主として米国南西部(アリゾナ州、カリフォルニア州、テキサス州、ネバダ州、ユタ州など)とメキシコ西部の半砂漠地域であり、その他、中南米でも発症例の報告がある。これら半砂漠地域の土壌中に生息するコクシジオイデス属の分生子を吸入することにより発症する。

感染症発生動向調査においてコクシジオイデス症は、2012年第1週~2023年第48週の期間中、患者34例が届出された(図1)。性別は男性22例、女性12例と男性が多く、年齢別では20代が13例と最多であった(図2)。推定感染地域は米国が31例(うち、19例がアリゾナ州、8例がカリフォルニア州との届出票への記載あり、)であり、大半を占めた。残り3例のうち2例は海外における感染(メキシコ1例、ニカラグア1例)であるが、1例は国内での発症である。しかしながら国内発症例は、以前にコクシジオイデス属の検体を扱った経験のある人に生じたものであり、わが国にコクシジオイデス属が土着し、感染症を発症したことを疑わせるものではない。その他、わが国で発症する地域流行型真菌症としてはヒストプラスマ症が多く、こちらも年間数例が診断されている(本号3ページ)。

播種性クリプトコックス症は5類感染症として全数が把握されており、年間120-180例程度が届出されている(本号4ページ)。その発生動向に季節性は認められない。主として高齢の免疫不全者での発症が報告されているが、免疫正常者、若年者での報告も一定数存在しており、注意を要するものと考えられる。最も分離頻度の高い菌種はCryptococcus neoformansであるが、近年では免疫正常者でも脳脊髄炎の症状をより高頻度に生じると報告されるCryptococcus gattiiも認められており、分離菌株中に占める割合の評価などが今後の課題である。

公衆衛生学的に重要な新興真菌感染症

主として免疫不全患者に感染症を生じる病原真菌として頻度の高いものは、カンジダ属とアスペルギルス属と報告されている。中でもカンジダ属は、臨床における深在性真菌症の中で最多と報告されており、特に注意を要する真菌である。最も分離頻度の高い菌種はCandida albicansであるが、近年ではC.albicans以外の菌種(non-albicans Candida)の割合が増加傾向にあることが報告されている。これらの中でも近年最も注目されている菌種はCandida aurisである。C. aurisは2009年に佐藤・槇村らにより、慢性中耳炎患者の耳漏から分離された非侵襲性の株として初めて報告された菌種である。しかし、その後世界各国から血流感染症(侵襲性)例が複数報告され、英国・米国などでは院内アウトブレイクも認められている。C. aurisはヒトの皮膚・環境中に長期間定着し、医療器具などを介した伝播が認められること、また抗真菌薬耐性頻度が高く、現在臨床上使用可能なすべての抗真菌薬に耐性を示す株が存在すること、などが知られており、新興真菌感染症に位置付けられ、世界各国で対策が取られている。わが国では、これまで非侵襲性症例の報告しかなされていなかったが、2023年に初の血流感染症死亡例が報告(本号6ページ)されて以来、2023年5月1日付で厚生労働省健康局結核感染症課より事務連絡が発出され(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001093562.pdf(外部サイトにリンクします)(PDF:376 KB))、その発生動向の把握を開始すると同時に、アウトブレイク時の対策が進められている(本号8ページ)。

真菌症の検査、薬剤感受性試験と抗真菌薬耐性

真菌症の確定診断は難しく、臨床検体から分離真菌を得るための培養検査の他、病理組織学的検査や遺伝子検査、血清診断など、複数の検査法を組み合わせることが必要となる(本号9ページ)。分離真菌が得られた場合、遺伝学的同定法が用いられることが一般的であるが、近年では質量分析装置も同定に広く用いられており、特に酵母様真菌の同定においては高い精度を示す。また、分離真菌を得ることの利点の1つに、薬剤感受性試験が実施可能になることが挙げられる。抗真菌薬耐性株が世界的にも問題となっている昨今、分離菌株の薬剤感受性試験は臨床に直結する重要なデータとなることが多く、その実施は極めて重要である(本号10ページ)。

近年、世界的に問題となっている薬剤耐性真菌としては、深在性真菌症の原因真菌であるアスペルギルス属のアゾール系抗真菌薬耐性(本号11ページ)や、カンジダ属のアゾール系、エキノキャンディン系抗真菌薬耐性に加え、表在性真菌症の原因真菌であるトリコフィトン属でも耐性株が問題視されている(本号12ページ)。中でも前述のC. aurisは抗真菌薬耐性頻度が高く、93%の分離株がフルコナゾール耐性、35%がアムホテリシンB耐性、また41%が2種類以上の抗真菌薬に耐性という報告もある(https://doi.org/10.1093/cid/ciw691(外部サイトにリンクします))。各真菌感染症に対する標準治療は確立されつつあるが、病型によっては月~年単位の抗真菌薬治療が必要となり、治療中に抗真菌薬耐性株が出現するリスクは常に存在する。薬剤耐性真菌の耐性機序の解析を行うと同時に、新規抗真菌薬開発と治療法の模索は真菌感染症領域における急務の課題である(本号13ページ)。

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