梅毒の病態や症状について(皮膚病変)
公開日:2023年12月25日
(IASR Vol.44 p191:2023年12月号)
梅毒は、複雑な進行形態をとる慢性感染症である。感染から発症までの期間は様々で、後述する第1期の皮膚粘膜症状(Treponema pallidum:T.pallidumの侵入局所に生じるもの)を呈さずに第2期顕症梅毒の皮膚粘膜症状(全身性に生じるもの)を呈するものや、第1期と第2期の症状を同時に呈する症例などに遭遇することもある。また、第1期から中枢神経浸潤、眼病変を呈する症例(神経梅毒)や、臨床症状を呈さずに、潜伏梅毒に移行する例があることも念頭におく必要がある。
典型的な臨床経過は、顕症期と潜伏期を繰り返しながら進行する。症状がないものの治療が必要な梅毒は、病期にかかわらず潜伏期梅毒という。治癒状態の梅毒は、陳旧性梅毒と呼ばれる。さらに母子感染による先天梅毒は別に扱われるが、近年でも年間20例程度の報告がある。
以下に病期ごとの典型例に関して記載するが、前述通りバリエーションが多いことを念頭においていただきたい。
a)第1期梅毒
感染後平均3週間程度の症状を全く呈さない潜伏期(第1期潜伏:曝露後10~90日)の後、T.pallidum侵入部位に軟骨様硬度の硬結(初期硬結)を呈する。主に外性器や肛門に生じるが、口唇や手指に症状を呈することもある。初期硬結の段階で医療機関を受診する症例は少なく、多くは中心部が潰瘍化した硬性下疳(図1)の状態で受診することが多い。さらに所属リンパ節腫脹、性器の感染であれば主に鼠径リンパ節の腫脹をきたす。一連の症状は一見派手だが、強い痛みを訴えることは少ない。初期硬結が下疳に至らず消退することもあるが、下疳に至っても2~3週間程度で消退し、2期疹を呈するまで無症状となる(第2期潜伏:下疳出現後4~10週間)。
b)第2期梅毒
感染後3カ月程度経過すると、T.pallidumが血行性に全身に移行し、バラ疹、丘疹性梅毒、梅毒性乾癬、扁平コンジローマ(図2)、色素性梅毒、梅毒性白斑、膿疱性梅毒、梅毒性爪囲炎といった皮疹や、梅毒性アンギーナ、乳白斑のような粘膜疹、さらには、まばらに毛が抜ける梅毒性脱毛といった様々な症状を呈する。全身症状としては、発熱や倦怠感、頭痛、関節痛などを呈することもある。手掌、足底に生じる典型的な梅毒性乾癬やバラ疹(図3)は比較的特異で診断価値が高いが、梅毒は多彩な臨床症状を呈し、鑑別に苦慮することも多い。第2期梅毒は感染から1年程度、潜伏期と発症を繰り返すことがある。
c)第3期梅毒
感染から年余を経ると深部の筋、骨に感染し結節性梅毒やゴム種が出現し、潰瘍化、瘢痕治癒して変形を残す。梅毒の感染力は時間経過とともに衰え、感染性はなくなるとされる。大動脈炎、大動脈瘤、脊髄癆、進行麻痺など多彩な症状を呈する。
越谷レイクタウン皮ふ科
獨協医科大学埼玉医療センター
尾上智彦