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ポリオウイルスのバイオリスク管理と施設認証

公開日:2023年8月30日

(IASR Vol.44 p125-127:2023年8月号

背景

2016年に、三価経口生ポリオワクチン(tOPV)から2型ポリオウイルス株を除いた二価OPVへの世界的変更が行われ、2018年の第71回世界保健機関(WHO)総会において、2型株封じ込めの徹底を含むポリオウイルス封じ込めに関する基本方針が決議された1)。本決議はまた、ポリオウイルス保有施設の数をできるだけ減らすこと、重要な機能を果たすポリオウイルス基幹施設(Poliovirus-Essential Facility: PEF)を今後も保持する国では国家封じ込め認証機関(National Authority of Containment: NAC)を設置し、WHOバイオリスク管理基準に基づきPEF認証を進めること、を求めている。一方、2023年現在、世界的には1型野生株および2型を中心としたワクチン由来ポリオウイルス伝播が依然継続しており、ポリオウイルス封じ込めの進捗に影響を及ぼしている2)

ポリオウイルス取り扱い施設におけるバイオリスク管理

高濃度かつ大量の感染性ポリオウイルスを取り扱うワクチン製造施設では、作業者のポリオウイルス感染や環境への感染性ポリオウイルス流出などの事故事例が、2010年以降、国内外で複数回報告されている3)。ポリオウイルス取り扱い施設に起因するポリオウイルス流出のリスクを最小化するためには、ポリオウイルス保有施設数を極力減らすとともに、ワクチン製造・品質管理、診断・研究など、根絶後も重要な機能を担うPEFにおいては、施設への封じ込め、地域の予防接種率、および環境安全対策の遵守により、施設由来のポリオウイルス伝播リスクの軽減を図る必要がある。

WHOは、2022年7月にポリオウイルス・バイオリスク管理に関する世界的行動計画改訂第四版(WHO Global Action Plan for Poliovirus Containment: GAP4)を公開した4)。GAP4では、施設、場所、および実施される作業を考慮したリスクベースのアプローチの活用を強調しており、リスク評価に基づいて適切なリスク管理策を策定・実施する必要がある。GAP4 Annex「野生株およびSabin/OPVポリオウイルス材料を保有するポリオウイルス基幹施設のためのバイオリスク管理基準」()では、施設における安全対策要件を示しており、NACによるPEF認証の基準となる。施設におけるバイオリスク管理基準は、施設に関連したポリオウイルス漏出のリスクを最小化するためのものであり、バイオリスク管理体制の整備、リスク評価、封じ込め施設の設計と運営、ワクチン接種、ならびにウイルス漏出または曝露が生じた場合の緊急時対応計画などからなる。

ポリオウイルス基幹施設の認証

すべてのPEFでは、GAP4Annexに含まれる14項目のバイオリスク管理基準に対応し()、NACによる施設認証を受ける必要がある。2型ポリオウイルスを保管・使用する国内PEF候補施設では、現在、WHOによる封じ込め認証計画に基づく施設監査が進められている5)。各施設により整備されたバイオリスク管理対策の妥当性については、専門家による監査チームおよびNACが検証・評価し、監査報告書、是正計画等を含む関連書類をWHO封じ込め作業部会および世界ポリオ根絶認定委員会に提出する。世界ポリオ根絶認定委員会からの勧告に基づき、最終的にはNACが封じ込め施設認証証明を発行する。GAP4 Annex要件のすべてを満たすことができない場合には、将来的な施設認証証明取得に向けた暫定的施設認証証明(interim certificate of containment)を発行し、是正を求めていくこととなる。

感染性ポリオウイルスを含む可能性のある材料のバイオリスク管理

日本では、2015年12月に、厚生労働省健康局結核感染症課が不必要なポリオウイルスの廃棄に関する通知を発出し、保管状況調査を実施した6-8)。その後国内では、ワクチン製造施設などを除き2型ポリオウイルスの保持は認められておらず、適切な方法による廃棄が推奨されている。一方、糞便、呼吸器、環境検体には、ワクチン株を含む感染性ポリオウイルスが偶発的に含まれている可能性があることから、このような検体のバイオリスク管理は、当該検体を保有するわが国の多くの施設にかかわる課題とされる。WHOは2021年に「ポリオウイルス感染性を有する可能性のある材料を、採取、取り扱い、あるいは保管する施設におけるリスクを最小限とするためのガイダンス(第二版)」を公開し、2型ポリオウイルスおよび3型野生株/3型ワクチン由来ポリオウイルスを対象とした施設調査と報告を各国に求めている9)

参考文献

  1. WHO, World Health Assembly resolution on the containment of polioviruses, 2018
    https://polioeradication.org/wp-content/uploads/2019/05/A71_R16-en.pdf(外部サイトにリンクします)(PDF:147 KB)
  2. WHO, Global Poliovirus Containment Action Plan 2022-2024, 2022
    https://polioeradication.org/wp-content/uploads/2022/07/GPCAP-2022-2024.pdf(外部サイトにリンクします)(PDF:838 KB)
  3. 塚原万葵ら, IASR 44: 81-82, 2023
  4. WHO, WHO Global Action Plan for Poliovirus Containment (GAP4), 2022
    https://polioeradication.org/wp-content/uploads/2022/07/WHO-Global-Action-Plan-for-Poliovirus-Containment-GAPIV.pdf(外部サイトにリンクします)(PDF:1,141 KB)
  5. WHO, Containment Certification Scheme to Support the WHO Global Action Plan for Poliovirus Containment, 2017
    https://polioeradication.org/wp-content/uploads/2017/11/CCS_19022017-EN.pdf(外部サイトにリンクします)(PDF:655 KB)
  6. 厚生労働省健康局結核感染症課長, 世界的なポリオ根絶に向けた, 不必要なポリオウイルスの廃棄について(健感発1211第1号), 平成27(2015)年12月11日
    http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/polio/dl/topics_20151211.pdf(外部サイトにリンクします)(PDF:118 KB)
  7. 清水博之ら, IASR 37: 22-24, 2016
  8. 清水博之, JBSA Newsletter 8: 9-14, 2018
    https://jbsa-gakkai.jp/information/2018/newsletter_vol8_2.pdf(外部サイトにリンクします)(PDF:6.2 MB)
  9. WHO, Poliovirus containment: guidance to minimize risks for facilities collecting, handling or storing materials potentially infectious for polioviruses, second edition, 2021
    https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/341367/9789240021204-eng.pdf(外部サイトにリンクします)(PDF:1,503 KB)

国立感染症研究所
ウイルス第二部
清水博之

安全実験管理部
河合康洋

厚生労働省健康局結核感染症課

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