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感染症発生動向調査における急性弛緩性麻痺報告例のまとめ, 2018年第18週~2023年第13週(2023年5月10日時点)

公開日:2023年8月30日

(IASR Vol.44 p123-125:2023年8月号

急性弛緩性麻痺(AFP)は、四肢の急性弛緩性運動麻痺を呈する症候群で、病因は様々である。ポリオ根絶施策の1つとして、世界保健機関(WHO)が各国におけるAFPサーベイランスの実施を求める中、日本では2018年5月からAFPは感染症発生動向調査の5類感染症全数把握疾患となった(15歳未満が届出対象)。2021年9月以降は、届出された全症例について国立感染症研究所(感染研)でポリオウイルス(PV)検査が実施されることになり、同時に、PV以外の原因病原体の把握のため、発生届の様式に病原体検査の項目が追加された。

本稿では、2018年第18週~2023年第13週までに報告されたAFP症例331例について、疫学情報および病原体情報をまとめた(2023年5月10日時点)。病原体情報は、感染症発生動向調査への報告内容に加え、感染研から自治体あてに追加確認して得た情報を解析した。1つ以上の病原体検出の報告があった症例を「病原体検出」、それ以外の症例を「病原体不明」と定義した。2018年5月~2019年12月までを「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行前」、2020年1月~2023年3月までを「COVID-19流行期」と定義した。

年間報告数はCOVID-19流行前の2018年が141例と最多で、COVID-19流行期には大きく減少したが、疫学的特徴や臨床症状はCOVID-19流行前後で大きな変化は認められなかった(および表1)。AFP症例331例のうち、性別は男性174例(53%)、年齢中央値は4歳[四分位範囲:2~9歳]であった。ポリオ含有ワクチン接種歴は、不活化ポリオワクチン(IPV)4回〔経口生ポリオワクチン(OPV)とワクチン種類不明との組み合わせを含む〕またはOPV2回の接種を完了した者が222例(67%)であった。麻痺部位は下肢の対麻痺が120例(36%)と最も多かった。神経症状以外の症状は、発熱が141例(43%)と最多で、脊髄画像異常所見が100例(30%)で認められた。81例から報告された104の検出病原体のうち、ライノウイルスおよびエンテロウイルスD68が各18例と最も多かった。PVの検出はなかった。

検査情報(採取検体、検査病原体、検査結果のいずれか)が得られた症例は228例(69%)で(表2)、このうち、検体として便・直腸ぬぐい液、呼吸器由来検体、血液および髄液の4点が採取されていたのは83例(36%)であった。

AFPはポリオとの鑑別に加え、原因病原体の解明が重要であるが、特に2020年と2021年は検査情報のない症例を含め病原体不明の症例の割合が高く、医療機関や保健所、地方衛生研究所におけるCOVID-19対応による業務負荷が、AFPの病原体検索の実施・報告体制に影響した可能性がある。今後、AFPの原因病原体の解明を進めるととともに、新興感染症流行に対応できるキャパシティを確保するためにも、平時の病原体検索体制の整備・拡充を図ることが重要と考えられた。

平素より感染症発生動向調査にご協力いただいている関係者の皆様に深謝したい。

国立感染症研究所
実地疫学専門家養成コース(FETP)
千葉紘子 大竹正悟

実地疫学研究センター
池上千晶 島田智恵 砂川富正

感染症疫学センター
新橋玲子 高梨さやか 神谷 元

AFPサーベイランスチーム

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