感染症発生動向調査に基づくエムポックスの国内における発生状況
公開日:2023年6月22日
(IASR Vol.44 p93:2023年6月号)
エムポックスは、感染症法上の4類感染症で、患者もしくは無症状病原体保有者を診断した医師、感染死亡者および感染死亡疑い者の死体を検案した医師は、ただちに最寄りの保健所への届出を行う必要がある。
2022年7月25日(第30週)に、欧州に渡航歴がある成人男性がエムポックスと診断された(図)。本症例は、現行の感染症発生動向調査で集計が開始された2003年以降、国内で探知された初めてのエムポックス症例となった。2022年第38週以降、海外渡航歴のない症例が散発的に報告されていたが、2023年第3週以降は海外渡航歴がない症例が増加し、さらに第10週以降、推定感染地域が国内である症例が急増した。
2022年5月~2023年5月2日時点までに129例が報告されている(表)。性別はすべて男性で、30代と40代が73%(94/129)を占めている。報告された症状のなかでは、発疹95%(118/124)、発熱77%(96/124)、リンパ節腫脹37%(46/124)の順に多かった。HIVの罹患状況が把握できた67例のうち、43例(64%)がHIV陽性者であった。現時点では重症例、死亡例の報告はない。居住地については、2023年2月中旬(第7週)までは関東圏のみの報告であったが、その後関西圏をはじめ東海、四国、沖縄県で報告されており、全国的な広がりを認めている。
エムポックスは、症状のみでは他の疾患との鑑別が容易でなく、発症から診断まで時間を要している症例や、複数の医療機関を受診してから診断される症例も少なくない。感染拡大を防ぐため全国的な周知・啓発が重要である。
なお、感染症法に基づき届出されたエムポックスの直近の届出数については、感染症発生動向調査週報(IDWR)を参照いただきたい。
国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース(FETP)
伊東花江 大沼 恵
実地疫学研究センター
小林祐介(感染症疫学センター併任) 島田智恵
感染症疫学センター
高橋琢理 有馬雄三