2022年に分離された腸管出血性大腸菌のMLVA法による解析
公開日:2023年5月26日
(IASR Vol.44 p72-73:2023年5月号)
国立感染症研究所(感染研)細菌第一部では、2014年シーズンから腸管出血性大腸菌(EHEC)O血清群(O群)O157、O26、O111、2017年からさらにO103、O121、O145、O165、O91について、反復配列多型解析(multiplelocus variable-number tandem-repeat analysis:MLVA)法による分子疫学サーベイランスを行っている。本稿では2023年3月29日時点における、2022年分離株のMLVA法による解析結果をまとめた。
感染研に送付された2022年のEHEC分離株は2,564株(同時期前年比5.5%増;2018年6月29日付の厚生労働省事務連絡「腸管出血性大腸菌による広域的な感染症・食中毒に関する調査について」に基づいて送付されたMLVAデータ396株分を含む)であり、このうち2,275株(89%)をMLVA法で解析し型名を付与した。各O群における解析株数、検出型数およびSimpson’s Diversity Index(SDI)注)は、O157が1,635株 665型 0.994(昨年同時期のSDI:0.995)、O26が349株 182型 0.982(0.976)、O111が92株 55型 0.985(0.855)、O103が104株 42型 0.922(0.952)、O121が40株 19型 0.928(0.987)、O145が20株 16型 0.979(0.803)、O165が5株 5型 1.00(0.929)、O91が30株 26型 0.989(0.979)であった。株数の同時期前年比は、O157:26%増、O26:12%減、O111:44%減、O103:1.0%増、O121:122%増、O145:31%減、O165:38%減、O91:19%減であった。
表1にO群O157、O26、O111のうち検出された菌株数が多かったMLVA typeおよびその各遺伝子座のリピート数を示す。
MLVAでは、リピート数が1遺伝子座において異なるsingle locus variant(SLV)など、関連性が推測される型をcomplexとしてまとめる様式をとっている。2022年は93のcomplexが同定された。
MLVA法によって試験した菌株に関し、送付地方衛生研究所(地衛研)等の機関(機関)の数に基づいて広域株の検索を行った。5以上の機関で検出されたいわゆる広域complexは23種類(511株)、complexに含まれないが5機関以上で検出された広域型は18種類(186株)であった。上位の当該complexおよび分離地域(ブロック)の分布は表2に示す通りであった。
表2中の主な広域株の地理的分布およびMLVAに基づくminimum spanning treeを図に示す。なお、22c209は2022年9月から検出され始め、2023年になっても検出されている。当該株は2023年3月現在で25機関61株検出されている。
MLVA法により迅速な菌株解析が可能となったことで、集団事例および家族内事例における菌株の同一性、散発例も含めた事例間の関連性および広域性の有無などの情報がよりリアルタイムに還元できるようになってきている。また、上記事務連絡によって、O群O157、O26、O111について地衛研で実施したMLVAデータから直接MLVA typeを付与し、当該型の一覧をMLVAリストとして共有することで、より早く情報共有が可能となっている。今後も迅速な菌株解析ならびに情報共有に努めていくので、引き続き関係機関のご理解とご協力をお願いしたい。
注)Simpson’s Diversity Index(SDI):多様性を表す指数の1つ。0-1の範囲で1に近いほど多様性が高く、0に近いほど多様性が低いことを示す。
国立感染症研究所細菌第一部
泉谷秀昌 李 謙一 伊豫田 淳 明田幸宏