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HUS症例における血清診断およびEHECの分離について

公開日:2023年5月26日

(IASR Vol.44 p73-74:2023年5月号

腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症の重症例である溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome:HUS)は国内で年間50-100例報告されている。このうち、EHECが分離されないHUS症例は全体の30-40%であり、これらの症例では患者便中のShiga毒素(Stx)の検出、または患者血清中の大腸菌〔主としてO血清群(O群)O157、O26、O111、O121、O145、O165、O103等の国内でHUS症例から分離されるEHECの98%を占めるO群〕に対する凝集抗体陽性でEHECによるHUS症例の確定診断とされている。

国立感染症研究所(感染研)細菌第一部で2009~2022年までに実施したHUS患者の血清診断は全116例あり、このうち大腸菌凝集抗体が陽性となった事例は93例であった(陽性率80.2%)。最も陽性数の多かったO群はO157で58.5%を占めているが、次いで陽性数の多いO群はO111(12.8%)、O121(11.7%)、O165(9.6%)、O145(6.4%)の順であった。このうち、O群O165はEHECの総分離数としては10番目に多く、重症例から分離されたEHECとしては7番目に多い(感染研細菌第一部での集計による)が、EHECの選択分離用として頻用される培地の多くで生育不良であることが報告されており、注意を要する1)。当初はEHECが不分離であるとされたHUS症例において、感染研細菌第一部で実施した血清診断でO165抗体陽性となり、同時に選択性の低い培地で実施した便培養(4例)のすべてからEHEC O165がそれぞれ分離された。O165を含め、選択分離培地で生育しないEHECが多数存在することを念頭に、少なくともHUS症例における便培養では選択性の低い培地を併用するなどしてEHECの分離を実施していただくよう、関係各位にお知らせしたい(本知見は感染研と地方衛生研究所の間で毎年開催されている衛生微生物技術協議会の中で開催されるレファレンス会議「大腸菌」や、国立保健医療科学院主催の細菌研修等でも参加者に適宜周知している)。

さらに、感染研細菌第一部で実施したHUS患者の便培養から、これまで3種類のShiga毒素遺伝子stx2f(イムノクロマト法では全く検出されないサブタイプ)陽性株が分離されており、重症例便検体からのEHEC分離にあたっては、すべてのstxサブタイプが検出可能なPCR系2)を用いることが必要である。

HUS症例における血清診断・便検査等のご依頼は随時受け付けております。国立感染症研究所細菌第一部までご連絡ください(メールアドレス:ehecアットマークnih.go.jp)。

参考文献

  1. 日本食品微生物学会雑誌 J Food Microbiol 32(4): 192-198, 2015
  2. 国立感染症研究所, 腸管出血性大腸菌(EHEC)検査・診断マニュアル(2022年10月改訂版)(PDF: 2.9 MB)

国立感染症研究所細菌第一部
伊豫田 淳 李 謙一 明田幸宏

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