風疹患者におけるウイルスRNAと感染性ウイルスの排出について
公開日:2023年4月21日
(IASR Vol.44 p51-53:2023年4月号)
背景
風疹の迅速かつ正確な診断は、感染拡大の防止、排除状況の把握に不可欠である。核酸検査法の1つであるreal-time RT-PCR(RT-qPCR)法の開発は、風疹ウイルス(RuV)-RNAの高感度かつ定量的な検出を可能にした。発症後のRuV-RNA排出量の推移が分かれば、検体採取や検査結果の解釈の一助になるが、その情報はない。また、検体中のRuV-RNA量は、感染性ウイルスの排出量と正の相関を示すと考えられるが、この仮説は証明されていない。本稿では、風疹患者における発疹出現後の日数とRuV-RNA量と感染性RuV排出との関係を、参考文献1から抜粋して報告する。
方法
2011~2020年までに風疹と検査診断(核酸検査、または、IgM抗体検査)された251名から得た767検体〔血漿/血清:192検体、末梢血単核細胞(PBMCs):132検体、咽頭ぬぐい液:222検体、尿:221検体〕に含まれるRuV-RNA量をRT-qPCR法2)を用いて定量し、検体1mL当たりの量に換算した。RuV-RNAが検出されなかった検体は2コピー/mLとして解析した。ウイルス分離は、646検体(血漿/血清:179検体、PBMCs:53検体、咽頭ぬぐい液:207検体、尿:207検体)を対象とした。まず、96ウェルプレートに用意したVero E6細胞に100μL/ウェルの検体を接種し、2時間吸着させた。その後、上清を除去し、200μL/ウェルの培地を添加した。37℃で10日間培養し、凍結融解後の上清を、新たなVero E6細胞に接種した。以上の手順を3回繰り返した。ウイルス分離の成否は、抗RuV-capsid特異的マウスモノクローナル抗体(バイオアカデミア株式会社)を用いた間接蛍光抗体法で確認した。本研究は、大阪健康安全基盤研究所倫理審査委員会によって承認されている(番号:1302-06-7)。
結果
発疹出現後の日数とRuV-RNA量と感染性RuV排出との関係を図に示す。RuV-RNA量の全体での中央値は、血漿/血清で138〔四分位範囲(IQR):2-2、367〕コピー/mL、PBMCsで2(IQR:2-424)コピー/mL、咽頭ぬぐい液で6,126(IQR:407-34,473)コピー/mL、尿で323(IQR:2-3,609)コピー/mLであった。RuV-RNAと感染性RuVの排出は発疹出現後0~2日でピークに達し、時間経過とともに減少した。RuV-RNA量の発疹出現後日数ごとの中央値は、血漿/血清で3日目、PBMCsで2日目、咽頭ぬぐい液で10~13日目、尿で6~7日目に検出下限値以下になった。感染性RuVは、血漿/血清で2日目、PBMCsで1日目、咽頭ぬぐい液で8~9日目、尿で4~5日目まで分離が可能であった。RuV-RNA量が多いほど、また、発疹出現からの日数が短いほど感染性RuVが存在する可能性が高かった。
結論
本解析から、以下のことが明らかになった。
- RuV-RNA量が多く、RuV-RNAと感染性RuVの検出可能期間が長いことから、咽頭ぬぐい液が核酸検査とウイルス分離の検査材料として優れている。
- すべての検体種で発疹出現後10~13日目以内にRuV-RNA量の中央値が検出下限値以下になることから、核酸検査を実施する場合、発症後なるべく早く検体を採取する必要がある。
- 発疹出現からの日数が短いほど感染性RuVを排出している可能性が高いことから、発疹出現後速やかに風疹患者を発見して感染伝播を防ぐ必要がある。
- RuV-RNA量が多くなるにともない感染性RuVが存在する可能性が高くなることから、RuV-RNA量から感染性ウイルスを排出している候補者を推定することで、効率的な感染対策ができる可能性がある。
これらの知見が、風疹のサーベイランスや診断のアルゴリズムの改善に貢献し、最終的に早期の感染伝播の阻止と風疹排除につながればと考えている。
謝辞:本研究をご支援くださいました大阪府、大阪府内の保健所、大阪健康安全基盤研究所ウイルス課、医療機関の方々、抗体を共同開発してくださいましたバイオアカデミア株式会社の北元憲利先生、鈴木麻美先生、品川日出夫先生に感謝いたします。
参考文献
- Kanbayashi D, et al., J Clin Virol 160: 105377, 2023
- 国立感染症研究所, 病原体検出マニュアル<風疹>第5.0版 令和4(2022)年10月(PDF:1,745 KB)
大阪健康安全基盤研究所
上林大起 倉田貴子 改田 厚 久保英幸 山元誠司 江川和孝 平井有紀
岡田和真 改田祐子 池森 亮 弓指孝博 森 治代 本村和嗣
大阪府健康医療部保健医療室感染症対策企画課
伊藤文美 齊藤武志
北海道大学人獣共通感染症国際共同研究所
大森亮介
大阪大学微生物病研究所
生田和良