感染症流行予測調査事業・B型肝炎感受性調査結果(2018~2021年)―大阪府
公開日:2023年3月30日
(IASR Vol.44 p38-39:2023年3月号)
背景と目的
感染症流行予測調査事業は、予防接種法に基づき定期予防接種の対象疾病について集団免疫の現況把握(感受性調査)および病原体検索(感染源調査)を行っている。これらの調査結果と疫学情報などをあわせて検討することで、予防接種が効果的に行われていることを確認し、長期的な視野で予防接種の対象である感染症の流行を予測することを目的としており、日本の予防接種政策の基礎資料として活用されている1)。
B型肝炎は、以前は輸血など医療に関連する感染や、母子感染が問題となっていたが、予防対策によりこれらによる感染は減少している。しかし父子感染や家庭内での感染、成人の性感染がなくならないことなどから、2016年10月1日より、B型肝炎ワクチンの定期接種が開始された2)。大阪府は2018年より、B型肝炎の感受性調査に参加しており、2018年には260人(うち9人年齢不明のため各集計から除外)、2019年に259人、2020年に239人、2021年に225人のB型肝炎の抗体価に関する結果を得た。
方法
B型肝炎のHBs抗体の測定には、2018~2020年はエンザイグノスト“Anti-HBsII“(シーメンス社)を、2021年はHEPATITIS B-anti HBs Quantitative(ExpressBio社)を、試薬の添付文書に従い使用した。
結果と考察
調査期間中の、年齢階級ごとのHBs抗体の保有率を図1に示した。B型肝炎ワクチンの定期接種の一般的なスケジュールは、生後2か月、3か月、7~8か月での3回接種となるため、0歳で3回目の接種を終えていない者、特に5か月齢以下のグループでは調査年によっては抗体価が検出限界以下の検体が多く認められた。定期接種開始以降に生まれた年齢階級2~5歳までの抗体保有率は他の年齢階級と比較して高い傾向がみられる一方で、3回接種済みでも検出限界以下の抗体価であった者も8.7%(92人中8人)みられた。定期接種開始以前に生まれた年齢階級3~6歳以上においても、14歳までの年齢階級で一定の抗体保有率がみられたが、これは、流行予測調査事業の協力医療機関(小児科)において、定期接種が始まる以前から予防接種が勧奨されていたためと考えられる。15~24歳までの抗体保有率は他の年齢階級と比較して低く、これは就業に必要とされる予防接種を受けている人がこの年齢階級では限られるためであると考えられる。25歳以降では自然感染した者や、職業や経歴によって予防接種を受けた者がいると考えられるため、15~24歳の年齢階級と比較して抗体保有率は高くなっていた。大阪府内の一般成人におけるワクチン接種率と、本事業協力者における接種率が異なっている可能性は、十分に考慮する必要がある。
次に、調査期間中の年齢階級ごとのHBs抗体価別の割合を図2に示したが、各年齢階級の母集団が十分には大きくないことと、予防接種によって獲得する抗体価に個人差があることから、特定の傾向を見出すことはできなかった。B型肝炎の感受性調査へ今後も参加することで、大阪府内におけるB型肝炎ワクチンの定期接種の効果を評価できると考える。
謝辞:大阪府において感染症流行予測調査事業にご協力くださっている医療機関や教育機関、研究機関に感謝申し上げます。
参考文献
- 国立感染症研究所感染症疫学センター, 感染症流行予測調査
- 厚生科学審議会, 予防接種制度の見直しについて(第二次提言)〔平成24(2012)年5月23日〕
大阪健康安全基盤研究所
阪野文哉 川畑拓也 浜みなみ 青山幾子 倉田貴子
上林大起 池森 亮 改田祐子 森 治代
協力機関:大阪府感染症対策企画課