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香川県における新型コロナウイルスに対する小児血清疫学調査―2023年度追加報

(IASR Vol. 45 p176-178: 2024年10月号)

はじめに

小児を対象とした血清疫学調査は検体採取に困難も多く、 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に関する小児抗体保有状況の報告は少ない。小学4年生を対象に生活習慣病予防健診(以下、 健診)が毎年行われている香川県市町のご協力のもと、 2020~2023年度までの4年間、 抗SARS-CoV-2抗体保有状況の変化をSARS-CoV-2感染診断歴(以下、 診断歴)、 新型コロナワクチン接種歴(以下、 接種歴)とともに継続的に追跡してきた。今回、 本誌2023年12月号(IASR 44: 208-210, 2023)に報告した2022年度までの結果に続き、 2023年度結果を追加報として報告する。

方法

2020~2023年度に県内協力市町の小学4年生9~10歳で健診を受診し保護者の同意を得られた対象者において、 健診終了後に保護者による自記式質問票調査および健診残余血清がある場合に、 抗SARS-CoV-2ヌクレオカプシド(N)抗体を評価した(Roche社)。2023年度は、 加えて全参加者で抗SARS-CoV-2スパイクタンパク(S)抗体価を測定した(Roche社)。抗N、 抗S抗体は各々cutoff index(COI)1以上、 0.8 U/mL以上を陽性とした。抗N抗体陽性は既感染を、 抗S抗体陽性は既感染もしくは新型コロナワクチン接種歴有を示唆する。調査は匿名化し、 国立感染症研究所における人を対象とする生命科学・医学系研究倫理審査委員会の承認(承認番号: 1574)のもと実施した。

結果

各年度において、 健診は5~12月、 続く質問票調査は7~12月に実施された。対象者数は各年2,387-3,222人(66.8-82.5%)〔( )内は各年度健診受診者数比〕で、 うち99.5-99.7%の対象者から質問票の回答が得られた。

本人のSARS-CoV-2感染診断歴有の割合は、 2020年度から順に、 0%、 0.4%、 41.0%、 64.8%、 家族の診断歴有の割合も同じく0.1%、 1.8%、 51.3%、 81.9%と、 4年間で大きく増加した(健診後の診断歴も含む、 )。2023年度、 診断歴のあった1,539人のうち8.4%(129人)に複数回の診断歴があり、 うち56%は前回診断から1年以内の感染であった〔16人(12.4%)は接種月不明のために間隔算出不可〕。なお、 直近の診断時の症状の有無は「あり」95.7%で、 2回目以上の診断に限っても「あり」92.9%であった。なお、 接種歴有の割合は、 2022年度は22.5%、 2023年度においても19.5%(接種回数内訳: 1回1.0%、 2回11.3%、 3回以上7.2%)であった。

続いて、 抗N抗体検査結果と質問票回答の両方が得られた対象者(各年度2,187-2,591人)の結果を示す。

抗N抗体保有割合は2020年度から順に0%〔95%信頼区間(CI): 0-0.15〕、 0.58%(95%CI: 0.35-0.95)、 40.1%(95%CI: 38.2-42.1)、 82.6%(95%CI: 80.9-84.1%)と、 2023年度にさらに著増した。また、 健診前の診断歴および抗N抗体陽性結果に基づく既感染割合は、 0%、 0.6%、 41.5%、 86.9%と、 上昇した。なお、 抗N抗体陽性であったものの健診前診断歴のなかった対象者は抗N抗体陽性者の27.6%、 一方、 健診前診断歴があったが抗N抗体陰性であった対象者は、 健診前診断歴あり対象者の6.8%相当存在した。

2023年度の抗S抗体保有割合は91.5%(2,001/2,187人、 95%CI: 90.2-92.6%)であった。質問票の回答ならびに抗N抗体検査結果から推察された抗S抗体の獲得機会として、 多い順に「感染のみ」77.4%、 「感染および接種」14.6%、 「接種のみ」4.1%、 「不明」3.8%であった(「不明」に「接種歴なし+診断歴なし+抗N抗体陰性」1.1%を含む)。感染歴がなく接種歴のみあった対象者82人は全例で抗S抗体が陽性であった。接種歴がない既感染の対象者1,561人の抗S抗体保有割合は99.2%であった(感染診断歴のあった対象者の多くが2022年1月以降の感染でオミクロン感染と推察され、 今回使用した祖先株抗S抗体試薬による測定では抗S抗体測定値として低値となることを考慮する必要がある)。

考察

2022年のオミクロン流行以降、 小児にもSARS-CoV-2感染が大きく拡大し、 2023年度の抗N抗体保有割合は82.6%、 既感染割合は86.9%、 抗S抗体保有割合は91.5%まで上昇していた。この結果は、 厚生労働省の全国22府県で同時期に実施された民間検査機関の残余血清を用いた第2回調査(2023年11月25日~12月13日)における、 5~9歳群〔抗N抗体75.4%(95%CI: 67.4-82.2%)・抗S抗体90.1%(95%CI: 84.0-94.5%)〕、 および10~19歳群〔抗N抗体78.1%(95%CI: 70.5-84.5%)・抗S抗体94.5%(95%CI: 89.5-97.6%)〕の抗体保有割合とおおむね同等の結果であった1)

5~11歳の小児を対象としたワクチン接種は2022年2月から開始され、 最大6回の特例臨時接種機会が設けられたが、 小児における新型コロナワクチン接種率は成人に比べ低いまま、 特例臨時接種は2024年3月31日に終了した(2024年4月1日時点公表値: 全国5~11歳の2回目接種率23.8%、 3回目接種率10.2%2))。本調査でも同等の接種率であり、 抗S抗体保有者の少なくとも77%は感染のみに由来すると考えられ、 大多数を占めた。

また、 診断歴のあった対象者の8.4%に複数回の診断歴があり、 その場合も症状があることがほとんどであった。

本調査において、 依然10%前後のSARS-CoV-2感受性者が存在すること、 1年以内の複数回の有症状の感染も生じうること、 が示唆され、 引き続き新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する感染対策と流行状況の把握は重要であると考えられる。

本検討の制約として、 年度内調査実施期間が複数月(最大5~12月)にわたったこと、 思い出しバイアス等が挙げられる。一方、 健診受診者の本調査参加割合、 質問票回答割合はともに非常に高く、 地域の小児におけるSARS-CoV-2感染状況を高い精度で捉え得たことは本調査の強みである。

謝辞: 本調査にご協力いただいた香川県研究参加市町の各年度小学4年生ならびに保護者の皆様、 小学校、 医師会の皆様、 香川県小児血清疫学調査チームの皆様、 国立感染症研究所抗体検査チーム関係者皆様に心より感謝申し上げます。

本研究は厚生労働科学研究費補助金新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業 JPMH20HA2007および23HA2005の交付を受けたものです。

参考文献

  1. 厚生労働省, 新型コロナウイルス感染症に関する抗体保有状況調査について, 民間検査機関での検査用検体の残余血液を用いた新型コロナウイルスの抗体保有割合実態調査(22府県)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00132.html(外部サイトにリンクします)
  2. 厚生労働省, 新型コロナワクチンの接種回数について〔令和6(2024)年4月1日公表〕
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/syukeihou_00002.html(外部サイトにリンクします)

国立感染症研究所

感染症疫学センター
森野紗衣子 高梨さやか 新井 智 鈴木 基

感染病理部
相内 章 鈴木忠樹

治療薬・ワクチン開発研究センター
森山彩野 高橋宜聖

香川県小児血清疫学調査チーム
藤川 愛

神奈川県衛生研究所
多屋馨子

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