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Kudoa hexapunctataが原因と疑われる食中毒事例の発生―福島市

公開日:2024年4月25日
(IASR Vol. 45 p68-69: 2024年4月号)

Kudoaは魚の筋肉に寄生する粘液胞子虫であり、その一種であるKudoa septempunctata(K. septempunctata)が寄生したヒラメを生で喫食した際には、食後数時間で一過性の嘔吐や下痢を主症状とする食中毒が起こることが知られている。同様にKudoaの一種であるKudoa hexapunctataK. hexapunctata)は、生鮮魚介類の有症苦情事例において、残品のマグロから検出されており、また、ヒト結腸由来Caco-2細胞に対して毒性を示すことが報告されているため、食中毒との関連性が示唆されている1)。今般、福島市において、K. hexapunctataが原因と疑われ、患者数が100名を超える大規模な食中毒が発生したので、その概要を報告する。

2024年1月、市内の旅館から、「宿泊者の複数名が体調不良を訴えている」との通報を受けて調査を行った。発症者は、2日間(1月2日および3日)の宿泊者260名のうち111名であり、潜伏時間は平均9時間30分(2日に宿泊の発症者70名は平均9時間50分、3日に宿泊の発症者41名は平均9時間であった)、主症状は下痢、嘔気・嘔吐、腹痛の他に悪寒・発熱(37-39℃)を呈しているのが特徴的であった。

潜伏時間と症状、2日間の夕食でヒラメの刺身を提供していたことから、調査当初はK. septempunctataによる食中毒を疑ったが、ヒラメの残品および患者便からK. septempunctataは検出されなかった。また、調理従事者便および患者便から特異的な食中毒細菌は検出されなかった。

ヒラメの刺身以外に共通して夕食で提供された品目としてキハダマグロとカンパチの刺身があったこと、また、積極的疫学調査において発症者と非発症者の喫食有無によるカイ2乗検定およびオッズ比でキハダマグロの刺身が原因である可能性が高いと示されたことから、K. septempunctataに類する寄生虫がいた可能性を検討し、国立医薬品食品衛生研究所に検査を依頼した。同研究所での検査により、キハダマグロの残品と患者便2検体がK. hexapunctata特異的PCR(検出限界は胞子数4×104個/g)2)で陽性となったことから、本件を「旅館で1月2日および3日に提供されたキハダマグロの刺身」が原因であり、キハダマグロに寄生していたK. hexapunctataが病因物質と疑われる食中毒とした()。

なお、喫食調査において、発症者のうち105名がキハダマグロの刺身を喫食していた(2名は喫食調査不能、2名は喫食不明、2名は非喫食であった)が、キハダマグロの残品からK. hexapunctataの胞子は確認されておらず、発症者がどの程度の胞子を摂食していたかは推定することができなかった。

旅館および中卸業者への調査によると、本事例のキハダマグロは輸入品であり、12月26日に現地で加工されてから一度も冷凍されないまま冷蔵下で流通し、12月30日に旅館に納品されて1月2日および3日に刺身として生のまま提供されている。K. hexapunctataが病因物質であるならば、少なくとも1週間程度の冷蔵保管では、その毒性がなくなってはいない可能性がある。

本事例では、疫学的にキハダマグロの刺身が原因の食中毒であると断定したうえで、K. hexapunctataが病因物質であった可能性が強く示唆されたが、本寄生虫が食中毒の病因物質に指定されていないため、病因物質を「寄生虫〔血清型等: クドア属(疑い)〕」と判断した。

マグロの刺身という一般的な食品が原因となり、患者数100名を超える食中毒が発生した事例であり、国内でのマグロの消費量の多さからも、再び大規模事例が発生するリスクは高いものと考えられる。また、K. hexapunctataが食中毒病因物質と認められていないことから、これまでも少数散発事例が食中毒とは断定されないまま見逃されていた可能性もあるものと思料される。本事例がK. hexapunctataの病原性を明らかにするための一助となれば幸いである。

謝辞: 本事例の調査にあたり、御協力いただいた各自治体関係者の方々に感謝申し上げます。

参考文献

  1. Suzuki J, et al., Int J Food Microbiol 194: 1-6, 2015
  2. Arai S, et al., Parasitol Int 75: 102048, 2020

福島市保健所
滝沢和央 八巻裕一 星 智樹 佐藤千尋
高野美紀子 橋本正行

国立医薬品食品衛生研究所
大西貴弘

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