保育施設における腸管出血性大腸菌O157による集団感染事例(第1報)
公開日:2023年9月27日
(IASR Vol. 44 p148-149:2023年9月号)
大阪市内A保育施設(施設A)において発生した腸管出血性大腸菌(EHEC)O157:H7(VT1&2)集団感染事例の概要について報告する。
端緒
2022年11月30日、B市保健所より、施設Aの1歳園児(0歳児クラス)がEHEC O157(VT1&2)感染症で届け出られたと大阪市保健所に連絡が入った。患児の発症は11月16日であり、同居の兄(小学生)も同日に発症し、11月24日にEHEC感染症と診断されていた。大阪市内C保健福祉センターは施設Aの調査を実施し、体調不良者がいないことを確認のうえ、施設関係者に対し2週間の健康観察を依頼した。
12月10日、B市保健所より、施設Aの2歳園児(1歳児クラス)がEHEC感染症で届け出られたと大阪市保健所へ連絡が入った。C保健福祉センターは再度、施設Aの調査を実施し、12月12日に0歳児および1歳児クラス園児とクラス担任全員に対する検便実施が決定された。12月14日には、有症で医療機関を受診した他の0歳児クラス園児2名がEHEC感染症と診断された。これを受け、施設の再調査、合同会議(施設A・C保健福祉センター・大阪市保健所)が実施され、全職員への検便拡大が決定された。大阪市保健所は大阪健康安全基盤研究所(大安研)疫学調査チーム(O-FEIT)に対し支援を依頼し、連携して事例対応にあたった。
陽性者の発生状況
医療機関受診者も含めた検査の結果、新たに10名の陽性者が判明し、園児の陽性者は、0歳児クラス17名中7名(41%)〔後述の園児(E)を含む〕、1歳児クラス17名中4名(24%)、職員の陽性者は39名中3名(8%)となった。陽性の職員は0歳児クラスの担任2名と、0歳児クラス陽性園児のおむつ処理に携わった職員1名であった。また、家族への接触者検便において、施設Aの2歳児、3歳児クラス園児からそれぞれ1名ずつ陽性者が発生したことから、2歳児、3歳児クラス園児へ検便を実施し、全員陰性であった。12月31日までに、施設関係者の陽性者は計16名となり、そのうち有症状者が15名、無症状病原体保有者が1名(職員)であった(図-a)。
疫学情報からわかったこと
陽性者への聞き取り調査の結果、11月下旬には0歳児クラスに加え、1歳児クラスにも発症者が存在し、その後両クラスで持続的に発症者が発生していたことから、施設内における感染伝播が疑われた(図-a)。陽性者は、0歳児クラスでは月齢に偏りはなかった一方、1歳児クラスでは月齢の低い園児に限定されていた。これは、1歳児クラスでは月齢の近い園児が同じグループで保育されており、グループ内での接触機会が多かったためと考えられた。
0歳児および1歳児クラスにおける感染伝播のリスク要因を検討するため、おむつやトイレの運用状況について聞き取りを実施した。その結果、0歳児は布おむつの運用、1歳児はパンツによるトイレトレーニングが実施されていたことが明らかとなった。
また、合同保育が実施されており、特に0歳児と1歳児クラス園児が一緒に保育を受ける時間があり、0歳児クラスから1歳児クラスへと感染伝播する機会があったと考えられた。
最終接触日から4週間後の新たな陽性者の発生
事例探知後、園児および職員の健康管理、手指衛生、環境清掃が強化され、0歳児、1歳児クラス園児を一時的に紙おむつ運用へと切り替えるとともに、クラス横断的な感染伝播の懸念から合同保育が停止された。
陽性者と施設関係者の最終接触日(2022年12月20日)から4週間、新規陽性者を認めていなかったが、2023年1月24日、0歳児クラス園児(D)が新たにEHEC感染症で届け出られた(図-b)。園児(D)は、1カ月前には検査陰性であったが、1月17日から発熱・下痢・血便を呈していたことが判明した。それを受け0歳児クラス園児および担任職員へ検便を実施した結果、園児(E)1名と陽性園児のパンツを処理した職員1名が陽性となった。3名いずれの陽性者も、喫食歴調査からは感染源を疑わせるような背景は確認されなかった。園児(E)は、1カ月前に陽性となり、2回陰性確認後登園を開始していたが、1月16日から軟便を認めていた。0歳児クラスでは感染伝播が懸念されたが、施設では引き続き感染対策が強化されており、拡がりは限定的であった。その後、再度の0歳児クラス園児・職員一斉検便の実施、全員陰性の確認を経て、最終接触から4週間後の2月24日に終息した。また、本事例において重症例は認めなかった。
大安研微生物部で実施されたMLVA解析の結果からは、2022年11~12月にかけて探知された陽性者由来株と、2023年1月以降に探知された陽性者由来株は、分子疫学的関連が認められるものであった(本号17ページ参照)。
今後に向けた提言
感染伝播の明らかな要因は不明であったが、布おむつやパンツの交換が感染拡大の一因となった可能性は否定できない。自らの症状を訴えづらく、排せつが自立していない乳幼児の保育は日常的に感染拡大リスクが高く、適切な感染管理の持続的な順守が感染拡大防止に重要となる。施設では有症状者数の増加を探知する体制を整備し、胃腸炎発症者増加、EHEC感染者発生の際には、紙おむつへの切り替え、手指衛生の強化、クラス横断的活動の一時見合わせなどの対応へ切り替えること、また、保健所を含め関係機関との連携が感染拡大の防止に重要であると考えられた。さらに、EHEC陽性者発生時には、再燃の可能性を想定した経過観察が重要であると考えられた。
大阪市保健所
津田侑子 宇野伽那子 富原亜希子 田中さおり 齊藤武志 中村訓子 國吉裕子 中山浩二
大阪市健康局
兼田雅代 吉田英樹
大阪健康安全基盤研究所健康危機管理課
柿本健作 入谷展弘
大阪健康安全基盤研究所細菌課
若林友騎 平井佑治 原田哲也 中村寛海 河合高生