コンテンツにジャンプ
国立健康危機管理研究機構
感染症情報提供サイト
言語切り替え English

トップページ > サーベイランス > 病原微生物検出情報(IASR) > IASR月報 > IASR国内情報 > ポリオワクチン(OPV, cIPV, sIPV)接種後の血中抗体持続性: 1974~2022年度の感染症流行予測調査より

ポリオワクチン(OPV, cIPV, sIPV)接種後の血中抗体持続性: 1974~2022年度の感染症流行予測調査より

公開日:2023年9月27日

(IASR Vol. 44 p146-148:2023年9月号

背景

ポリオウイルス患者は経口生ポリオワクチン(OPV)により減少したが、OPV使用にともなうワクチン関連麻痺やワクチン由来ポリオウイルスによるポリオ流行が問題であった。ポリオ根絶にはOPVの完全な使用停止が必要であり、多くの国でOPVから不活化ポリオワクチン(IPV)への切り替えが進められ、IPV導入国の多くは強毒株由来IPV(cIPV)を採用している。セービン株由来IPV(sIPV)はcIPVと比較しバイオリスクの低減が期待されており、わが国は世界に先駆けて2012年11月に定期接種化された。2023年5月時点、sIPV導入国は日本と中国の2カ国で、sIPV単独での接種スケジュールを導入するのは日本のみである。そのため、sIPV接種者における防御効果の持続性に関する知見が極めて少ない。今回、sIPV接種による防御効果の持続性を血中抗体価の観点から検討し、cIPV接種者およびOPV接種者の血中抗体価と比較した。

方法

1974~2022年度の感染症流行予測調査により得られたポリオウイルス1型(PV1)、ポリオウイルス2型(PV2)、ポリオウイルス3型(PV3)に対する抗体価と予防接種歴聞き取り帳票を用いた()。OPV、cIPV、sIPVいずれかの標準予防接種スケジュールを完了し、予防接種歴聞き取り帳票から接種したワクチンの種類および最終接種年月が明確に分かる0~10歳の小児(OPV:n=654、cIPV:n=193、sIPV:n=347)について、最終接種年月からの血中抗体価推移を解析した。

結果

OPV接種者は、PV1、PV2と比較してPV3に対する抗体価が低く、これまでの知見と一致した。一方、cIPVとsIPVの接種者は、PV3に対しても高い抗体価を示した。sIPV接種者の最終接種から1年以内の幾何平均抗体価(GMT)は、PV1、PV2、PV3についてそれぞれ177〔95%信頼区間(CI):160-196〕、422(95%CI:393-452)、297(95%CI:271-326)であった。sIPV接種者はPV2、PV3に比べてPV1のGMTが低かったが、cIPV接種者と同等であった。また、最終接種年月からの最初の7年間において、sIPV接種者のPV1に対する抗体価はcIPV接種者と同等であり、PV2およびPV3についてはcIPV接種者よりも高く維持されていた()。

結論

本研究ではサンプルサイズが限定されており、特にcIPV、sIPV接種者の長期的な抗体価推移の解釈には注意が必要である。予防接種歴聞き取り帳票の思い出しバイアスの影響から、接種歴の誤分類の可能性が考えられる。抗体価に関しては、セービン株と強毒株で抗原性が異なる点、ワクチン間のD抗原含有量の違い、中和抗体測定にセービン株を用いている点など、sIPVとcIPVで誘導される抗体価の差の解釈には注意が必要である。以上の制限を考慮しつつ、sIPV接種後少なくとも7年間はcIPV接種者と同等またはそれ以上の抗体価が維持されていることが明らかになった。この結果は、ポリオウイルス封じ込めの観点からもsIPVの優位性を示唆する結果と考える。

 

東京都健康安全研究センター
長谷川道弥 長島真美

愛媛県立衛生環境研究所
山下育孝 大塚有加 青木紀子

富山県衛生研究所
板持雅恵 谷 英樹

愛知県衛生研究所
伊藤 雅 廣瀬絵美 佐藤克彦

北海道立衛生研究所
櫻井敦子 駒込理佳

山形県衛生研究所
池田陽子 青木洋子

千葉県衛生研究所
花田裕司 吉住秀隆

国立感染症研究所
ウイルス第三部
有田峰太郎

感染症疫学センター
菊池風花 林 愛 新井 智 神谷 元 鈴木 基

PDF・Word・Excelなどのファイルを閲覧するには、ソフトウェアが必要な場合があります。
詳細は「ファイルの閲覧方法」を確認してください。