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三重県におけるサポウイルスとノロウイルスの検出状況(2017~2022年)

公開日:2023年4月21日

(IASR Vol.44 p62-64:2023年4月号)

三重県感染症発生動向調査に基づき、2017~2022年に県内の病原体定点医療機関等より搬入された感染性胃腸炎患者検体におけるサポウイルス(SaV)とノロウイルス(NoV)の検出状況について報告する。SaVの検出はcapsid領域を標的としたコンベンショナルPCR法1)により、NoVの検出はreal-time PCR法およびコンベンショナルPCR法2,3)により行った。またcapsid領域の遺伝子型別は、得られたPCR産物の塩基配列をダイレクトシーケンス法により決定し、ノロウイルスタイピングツール4)やBLAST検索、系統樹解析により同定した。なお、三重県では感染性胃腸炎の病原体検査としてSaVとNoVのほかに、A群ロタウイルス、アストロウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルスの検索も同時に行っている。

感染性胃腸炎の発生動向

2017~2022年の三重県における定点当たりの週別患者報告数は0.68~14.27人(平均4.12人)であり、警報レベルの20人を超えた週はなかった5)

月別SaVの検出数、遺伝子型の推移

月別・遺伝子型別のSaV検出数を図1に示した。調査期間中に搬入された感染性胃腸炎の検体数は703検体で、うち96検体(13.7%)からSaVが検出された。検出されたSaV遺伝子型別の割合は、G1.1が39.6%(n=38)で最も多く、次いでG2.3が19.8%(n=19)、G2.1が15.6%(n=15)、G1.3が7.3%(n=7)、G1.2とG2.2が各5.2%(n=5)、G2.5とG5.1が各3.1%(n=3)、G4.1が1.0%(n=1)の順であった。

SaV流行の特徴として、2017~2019年は、夏期に多く検出された遺伝子型のSaVがその後の冬期に流行している傾向がみられたことや(2017年はG2.3、2018年はG1.1、2019年はG2.1)、G2.1の検出・流行が2019年のみであったことが挙げられる。また、これらの遺伝子型以外にもG1.3等多様な遺伝子型のSaVが検出された。2021年5~7月にはこれまで三重県で検出歴のないG2.5が検出され、2021年12月~2022年7月にかけてG1.1の検出が続いた。

月別NoVの検出数、遺伝子型の推移

月別・遺伝子型別のNoV検出数を図2に示した。感染性胃腸炎703検体のうち143検体(2種類のNoVが検出された1例を含む)(20.2%)からNoVが検出された。検出されたNoV遺伝子型別の割合は、G2.4が56.6%(n=81)と最も多く、次いでG2.2が23.8%(n=34)、G1.2とG2.3が各4.9%(n=7)、G1.3が2.8%(n=4)、G2.6が2.1%(n=3)、G1.7とG2.17が各1.4%(n=2)、G1.4が0.7%(n=1)、G2の型別不能が1.4%(n=2)の順であった。なお、5検体でSaVとNoVもしくは2種類のNoVによる混合感染が認められ、その内訳はSaVG1.1+NoVG2.2、SaVG1.1+NoVG2.4、SaVG2.1+NoVG2.4、SaVG2.1+NoVG2.3、NoVG1.3+NoVG2.4であった。

2017~2019年はG2.4がNoVの主要な遺伝子型であったが、SaVと同様に多様な遺伝子型のNoVが検出された時期でもあった。2020~2021年はG2.2が多く検出され、その後は再びG2.4に変わった。また、SaVとNoVでは、検出数のピークや流行する遺伝子型が変わる時期が異なっていた。

シーズン別のSaVおよびNoV検出状況

シーズン(9月~翌年8月まで)別SaV・NoV遺伝子型別検出状況を図3に示した。2017/18、2019/20、2021/22シーズンは、SaVの検出率がNoVと比較して同等もしくは高くなっていた。また、調査した5シーズンにおいて、SaVはG1.1、NoVはG2.4が優位な遺伝子型であったが、2019/20シーズンのSaVG2.1、2020/21シーズンのSaVG2.5およびNoVG2.2のように、シーズンによって異なる遺伝子型が台頭していた。

三重県におけるSaVを原因とする感染性胃腸炎は、G1.1を中心に多様な遺伝子型株が関与しており、NoVを原因とする感染性胃腸炎と比較すると、隔シーズンで同等以上に流行していたことが明らかとなった。SaVは小児の感染性胃腸炎の主要な原因ウイルスであり、過去10年間の三重県感染症発生動向調査におけるSaVの検出数はNoVに次いで多い。また、国内ではNoVだけでなくSaVによる食中毒事例や集団事例も報告されており6-8)、いずれのウイルスも食品衛生の面で非常に重要なウイルスである。今後、流行状況の把握にとどまらず、集団事例等の調査においてもNoVで行われているのと同様に、SaVの遺伝子解析は必要になると考えられることから、地方衛生研究所における遺伝子型別の積極的な実施や次世代シーケンサーによる全ゲノム解析の導入が必要である。

協力医療機関(検体提供)

落合小児医院、さかとく小児科、すこやかこどもクリニック、三原クリニック、鈴鹿病院、四日市羽津医療センター

参考文献

  1. Okada M, et al., Arch Virol 151: 2503-2509, 2006
  2. 国立感染症研究所, ウイルス性下痢症診断マニュアル, 平成11(1999)年9月
  3. 国立感染症研究所, 病原体検出マニュアル, ノロウイルス(第1版), 令和元(2019)年6月(PDF: 1,346 KB)
  4. https://www.rivm.nl/mpf/typingtool/norovirus/(外部サイトにリンクします)
  5. https://www.kenkou.pref.mie.jp/weeklyss/4.html(外部サイトにリンクします)
  6. 辰己智香ら, IASR 40: 90-91, 2019
  7. 原 稔美ら, IASR 40: 108-109, 2019
  8. 高橋知子ら, IASR 43: 189-191, 2022

三重県保健環境研究所
楠原 一 小林章人 北浦伸浩 小掠剛寛 岩出義人
浅井隆治 中井康博

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