ブタの日本脳炎抗体保有状況-2013年度速報第1報
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ブタの日本脳炎抗体保有状況 -2013年速報第1報-(2013年7月23日現在) |
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日本脳炎は,日本脳炎ウイルスに感染したヒトのうち数百人に一人が発症すると考えられている重篤な脳炎である1)。ヒトへの感染は,日本脳炎ウイルスを媒介する蚊(日本では主にコガタアカイエカ)が日本脳炎ウイルスに感染したブタを吸血し,その後ヒトを刺すことにより起こる。 1960年代までは毎年夏から秋にかけて多数の日本脳炎患者が発生しており2),3),ブタの感染状況から日本脳炎ウイルスが蔓延している地域に多くの患者発生がみられた。当時,Konnoらは調査したブタの半数以上が日本脳炎ウイルスに感染していると,約2週間後からその地域に日本脳炎患者が発生してくると報告している4)。現在では,日本脳炎ワクチン接種の普及や生活環境の変化等により,ブタの感染状況と患者発生は必ずしも一致しておらず,近年における日本脳炎患者報告数は毎年数名程度である。しかし,ブタの抗体保有状況から日本脳炎ウイルスが蔓延あるいは活動していると推測される地域では,ヒトへの感染の危険性が高くなっていることが考えられる。 感染症流行予測調査事業では,全国各地のブタ血清中の日本脳炎ウイルスに対する抗体を赤血球凝集抑制法(HI法)により測定することで,日本脳炎ウイルスの蔓延状況および活動状況を調査している。前年の秋以降に生まれたブタが日本脳炎ウイルスに対する抗体を保有し,さらに2-メルカプトエタノール(2-ME)感受性抗体(IgM抗体)を保有している場合,そのブタは最近日本脳炎ウイルスに感染したと考えられる。下表は本年度の調査期間中におけるブタの抗体保有状況について都道府県別に示しており,日本脳炎ウイルスの最近の感染が認められた地域を青色,それに加えて調査したブタの50%以上に抗体保有が認められた地域を黄色,調査したブタの80%以上に抗体保有が認められた地域を赤色で示している。 本速報は日本脳炎ウイルスの感染に対する注意を喚起するものである。また,それぞれの居住地域における日本脳炎に関する情報にも注意し,日本脳炎ウイルスが蔓延あるいは活動していると推測される地域においては,予防接種を受けていない者,乳幼児,高齢者は蚊に刺されないようにするなど注意が必要である。 本年度の日本脳炎定期予防接種は,第1期(3回)については標準的な接種年齢である3~4歳および第1期接種が完了していない小学1~4年生(年度内に7~10歳:2003~2006年度生まれ),第2期(1回)については高校3年生相当年齢(年度内に18歳:1995年度生まれ)に積極的勧奨が行われているが,それ以外でも日本脳炎ウイルスの活動が活発な地域に居住し,接種回数が不十分な者は日本脳炎ワクチンの接種が望まれる。なお,日本脳炎の予防接種に関する情報については以下のサイトから閲覧可能である。 【 国立感染症研究所HP / 厚生労働省HP 】 |
抗体保有状況 (地図情報) ![]() 抗体保有状況 (月別推移) ![]() |
HI抗体 | 2-ME 感受性 抗体 |
都道府県 | 採血 月日 |
HI抗体 陽性率 注意:1 |
2-ME感受性 抗体陽性率 注意:2 |
コメント |
◎ 5/27 |
◎ 6/24 |
沖縄県 | 7/16 | 0% (0/20) |
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大分県 | 7/12 | 0% (0/10) |
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◎ 7/2 |
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長崎県 | 7/2 | 100% (10/10) |
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HI抗体陽性例はすべて抗体価1:40未満であった。 |
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佐賀県 | 7/17 | 0% (0/10) |
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福岡県 | 7/16 | 0% (0/10) |
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◎ 6/25 |
◎ 6/25 |
高知県 | 7/9 | 90% (9/10) |
50% (4/8) |
HI抗体陽性例のうち8頭は抗体価1:40以上であり、そのうち4頭から2-ME感受性抗体が検出された。 |
◎ 7/9 |
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愛媛県 | 7/16 | 0% (0/10) |
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三重県 | 7/16 | 0% (0/10) |
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新潟県 | 7/16 | 0% (0/10) |
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茨城県 | 7/16 | 0% (0/10) |
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調査期間中に調査したブタのHI抗体陽性率が80%を超えた地域 | ||||||
調査期間中に調査したブタのHI抗体陽性率が50%を超え,かつ2-ME感受性抗体が検出された地域 | ||||||
調査期間中に調査したブタから2-ME感受性抗体が検出された地域 | ||||||
◎ | 調査期間中に調査したブタからHI抗体あるいは2-ME感受性抗体が検出されたことを示し、日付は今シーズンで初めて検出された採血月日を示す | |||||
注意:1 HI抗体は抗体価1:10以上を陽性と判定した。 注意:2 2-ME感受性抗体は抗体価1:40以上(北海道・東北地方は1:10以上)の検体について検査を行い,2-ME処理を行った血清の抗体価が未処理の血清と比較して,3管(8倍)以上低かった場合を陽性,2管(4倍)低かった場合を疑陽性,不変または1管(2倍)低かった場合を陰性と判定した。なお,2-ME未処理の抗体価が1:40(北海道・東北地方は1:10あるいは1:20も含む)で,2-ME処理後に1:10未満となった場合も陽性と判定した。 |
1. | Southam, C. M., Serological studies of encephalitis in Japan. II. Inapparent infection by Japanese B encephalitis virus. Journal of Infectious diseases. 1956. 99: 163-169. |
2. | 松永泰子,矢部貞雄,谷口清州,中山幹男,倉根一郎. 日本における近年の日本脳炎患者発生状況-厚生省伝染病流行予測調査および日本脳炎確認患者個人票(1982~1996)に基づく解析-. 感染症学雑誌. 1999. 73: 97-103. |
3. | 新井 智,多屋馨子,岡部信彦,高崎智彦,倉根一郎. わが国における日本脳炎の疫学と今後の対策について. 臨床とウイルス. 2004. 32(1): 13-22. |
4. | Konno, J., Endo, K., Agatsuma, H. and Ishida, Nakao. Cyclic outbreaks of Japanese encephalitis among pigs and humans. American Journal of epidemiology. 1966. 84: 292-300. |
国立感染症研究所 感染症疫学センター/ウイルス第一部 |