IDWR 2020年第18・19合併号<注目すべき感染症> 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
新型コロナウイルス感染症は、2019年12月、中華人民共和国湖北省武漢市において確認された。世界保健機関(WHO)は、2020年1月30日、新型コロナウイルス感染症について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言した。その後WHOは、世界的な感染拡大の状況、重症度等から3月11日新型コロナウイルス感染症をパンデミック(世界的な大流行)とみなせると表明した。
2020年5月13日12時現在、感染者数(死亡者数)は、世界で4,212,636例(290,463例)、204カ国・地域に広がった。感染者数が3万例を超えたとして報告のあった国は22カ国あり、それらは米国1,369,314例(82,340例)、ロシア231,912例(2,112例)、スペイン228,030例(26,920例)、英国226,463例(32,692例)、イタリア221,216例(30,911例)、ブラジル177,602例(12,404例)、ドイツ173,171例(7,738例)、トルコ141,475例(3,894例)、フランス140,227例(26,991例)、イラン110,767例(6,733例)、中国82,926例(4,633例)、ペルー72,059例(2,057例)、インド70,756例(2,293例)、カナダ70,342例(5,049例)、ベルギー53,779例(8,761例)、オランダ42,984例(5,510例)、サウジアラビア42,925例(264例)、メキシコ36,327例(3,573例)、パキスタン32,674例(724例)、チリ31,721例(335例)、スイス30,380例(1,542例)、エクアドル30,149例(2,327例)であった。
国内は、厚生労働省からの報道発表によると、2020年5月13日12時現在、新型コロナウイルス感染症のPCR検査陽性者16,024例、うち死亡者668例と報告されている。PCR検査実施人数は223,667例であった。また、2月3日に横浜港に到着したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」については、5月12日24時現在、PCR検査陽性者712例、うち無症状病原体保有者331例、死亡者13例であった。なお、国内外の患者数等に関する情報は刻々と変わっていることに注意されたい。
本稿では、2020年2月1日に新型コロナウイルス感染症が指定感染症となった以降、第19週(2020年5月13日)までに感染症発生動向調査(NESID)へ届け出られた15,184例(患者13,525例、無症状病原体保有者1,634例、感染症死亡者の死体25例)(以下、症例という)に関する記述疫学を行う。なお、本症については、サーベイランスシステムが届出に対応可能となった以降に届け出られた情報のみ反映されていることから、国や自治体の報道発表情報と必ずしも一致しておらず、注意が必要である。すなわち、以後の情報はNESIDに届け出られた症例全体の内訳であり、また、自治体による確認が行われていない報告は含められていない。 |
症例の性別は、男性8,454例、女性6,726例、不明4例(男女比1.3:1)であり、男性に多かった。
年齢の中央値は49歳(範囲0~104)であった。年代別分布は10歳未満243例(1.6%)、10代355例(2.3%)、20代2,450例(16.1%)、30代2,299例(15.1%)、40代2,377例(15.7%)、50代2,531例(16.7%)、60代1,848例(12.2%)、70代1,624例(10.7%)、80代1,049例(6.9%)、90代以上408例(2.7%)であった。
主な症状(重複あり)は、届出時点で発熱11,487例(75.7%)、咳6,589例(43.4%)、咳以外の急性呼吸器症状1,357例(8.9%)、重篤な肺炎1,055例(6.9%)であった。
届出都道府県は、東京都5,076例、大阪府1,753例、神奈川県1,597例、埼玉県967例、千葉県951例、北海道715例、兵庫県690例、福岡県611例、愛知県400例、石川県255例、茨城県165例、岐阜県151例、広島県150例、群馬県147例、富山県126例、福井県97例、滋賀県91例、奈良県88例、宮城県81例、福島県81例、長野県75例、静岡県72例、新潟県69例、山形県67例、京都府62例、和歌山県62例、沖縄県61例、大分県59例、栃木県56例、愛媛県48例、高知県48例、三重県45例、佐賀県40例、山梨県36例、山口県36例、青森県27例、島根県24例、岡山県24例、長崎県17例、宮崎県17例、秋田県16例、熊本県11例、鹿児島県10例、徳島県5例、鳥取県3例、香川県2例であった。
国内では、3月上旬から海外との関連が疑われる事例が増加してきた。また、感染源不明の症例が散発的に発生し、3月中旬には感染源不明の症例が占める割合が継続的に増加してきた。3月下旬には、都市部を中心にクラスター(患者間の関連が認められた集団)感染が次々と報告され、感染者数が急増した。5月13日現在、NESID上、報告の最も多かった日は4月9日(627例)、発症の最も多かった日は、4月1日(404例:発症日の判明している症例のみ)であった。その後も届出数の多い状況が続いているものの、4月初旬をピークとして緩やかに減少してきた(図1、図2)。なお、図1及び図2については、今後の報告により直近の症例が追加されていくため、解釈には注意が必要である。
国内での行政対応については、3月10日、新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部改正が閣議決定され、新型コロナウイルス感染症が新型インフルエンザ等対策特別措置法に規定する新型インフルエンザ等とみなされることになった。3月28日には「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」が発表され、この中では、国民の生命を守るためには、感染者数を抑えること及び医療提供体制や社会機能を維持することが重要であり、「三つの密」(密閉空間・密集場所・密接場面)を避けること、積極的疫学調査等によるクラスターの発生の封じ込めが推進されている。その後、肺炎等の重篤な症例の発症頻度が相当程度高く、国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあり、かつ感染経路が特定できない症例が多数に上っていること、かつ急速な増加が確認されており、医療提供体制もひっ迫してきていることとして、4月7日には7都府県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県、福岡県)に対して、4月16日には全都道府県を対象に、緊急事態宣言が発出された。各自治体は、国の取り組みに並行して、流行状況に合わせた様々な取り組みを実施している。5月14日、感染の状況、医療提供体制、検査体制の構築などの点が総合的に判断され、北海道、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、京都府、大阪府、兵庫県の8都道府県を除く、39県において緊急事態宣言の解除が行われた。
新型コロナウイルス感染症については、病原体や疾患に関する知見が徐々に蓄積されつつある。飛沫感染・接触感染を主とする感染経路であり、一部の感染者及び感染者の行動や、環境要因によっては強い感染伝播が発生する場合があると考えられている。臨床的な特徴としては、1~14日(5日間が最も多い)の潜伏期間(2月23日付WHO)を経て、発熱や呼吸器症状、全身倦怠感等で発症する。感冒様症状が1週間前後持続することが多く、この頃より胸部X線写真、胸部CTなどで肺炎像が明らかになることがある。一部のものは、呼吸困難等の症状を呈し、重症化する。また、発症者の多くが軽症であると考えられているが、特に高齢者や基礎疾患等を有する者においては重篤になる可能性があるため厳重な注意が必要である。
●新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年5月13日版)
国立感染症研究所 感染症疫学センター |