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黄熱疾患情報 (ウイルス第一部)

公開日:2012年3月11日

主要な脊椎動物の宿主はサルとヒトである。ウイルス血症は約8日間続いてその後終生免疫を残す。アフリカでは主にアフリカミドリザルが感染するが、中南米では多種類のサル(リスザル、マーモセット、ホエザル、クモザルなど)が感染し、感染した場合それらのサルの致命率は高い。蚊は媒介動物でありまた保有宿主でもある。Aedes属(主としてアフリカ)、Haemagogus属(主としてアメリカ大陸)のいろいろな種が関与する。

節足動物中でのウイルスの増殖には4ないし10日を要し、それ以前には感染力はない。

黄熱の浸淫地帯:地図参照(下図)

北緯15度と南緯15度に挟まれたアフリカの熱帯地方にはこの浸淫地帯が広がっている(図1)が、例外はジブチ、ソマリア北部、マダガスカルとAedesを駆逐した都市である。アメリカ大陸の熱帯地方では、北はパナマから南緯15度に至るまで広がっており(図2)雨季に発生が多い。特にアマゾン川流域の熱帯雨林に接した国々で地域流行を起こし毎年のように患者発生があるが、WHOは正確な患者数を把握していない。

アジアと太平洋では、黄熱は存在しないが少なくとも都市部にはAedes aegypyiが生息するため伝播状況は整っている。

第二時世界大戦後の大きな流行

  1. 西パナマで始まりメキシコで終息した中米の流行(1949-1956)
  2. トリニダード(1954)
  3. エチオピア(1960-1962)
  4. セネガル(1965)
  5. ナイジェリア(1969)
  6. ブルキナファソ(1969と1983)
  7. アンゴラ(1971)
  8. シエラレオネ(1975)
  9. ガーナ(1977~1979と1983)
  10. ガンビア(1978~1979)

最近五年間で流行をみた国は、ボリビア・ブラジル・ペルー・セネガル・ガーナ・コートジボアールなどである。

臨床症状

潜伏期

通常3ないし6日である。偶発的な実験室内感染ではより長い潜伏期10~13日の例が報告されている。

軽症黄熱

発熱と頭痛が突然あらわれ、鼻カタル症状のない点を除けばインフルエンザに類似している。症状を列挙すれば、頭痛・発熱・悪心・嘔吐・結膜充血・蛋白尿などである。1~3日で回復する。

重症黄熱

感染期、緩解期、中毒期の3段階に明確に分けられる臨床経過が特徴である。緩解期は、わずか数時間である。発病は、頭痛・眩暈・高熱で突然はじまり、第2病日までにはFagetの徴候“高熱にもかかわらず脈拍数は48~52/分という徐脈”が現われる。黄熱の古典的三徴候は、黄疸・出血(鼻出血・歯肉出血・下血・子宮出血)・蛋白尿(高度の蛋白尿であっても浮腫・腹水をきたすことは稀である)である。その他の症状として、嘔吐・結膜充血・顔面紅潮・せん妄などがある。

検査所見

病初期に進行性白血球減少症(主として好中球の減少)。白血球総数は第10病日までには正常化する。
血小板数は正常または減少する。黄疸のある症例では凝固時間・プロトロンビン時間・部分トロンボプラスチン時間の顕著な延長
総ビリルビン(抱合型ビリルビン)の増加、血清GOT値の著名な増加(黄疸例で特に顕著である)
脳脊髄液は正常である。

実験室内診断

  1. ウイルス分離:発症後3日以内に採取された検体から最もよく分離できる。蚊の培養細胞またはオウカの胸部に接種を行う。または、PCR法を用いて遺伝子を検出する。
  2. 血清学的検査:ペア血清を用いたプラック減少中和試験、黄熱IgM抗体の検出が黄熱ウイルスに特異的な検査法である。中和試験は判定に時間がかかるのが欠点である。

治療

対症療法のみである。

黄熱ワクチン

(1)ワクチン株

Max Theilerにより、1927年にAsibiという患者から分離された黄熱ウイルスを、種々の培養初代細胞で頻回継代し、最終的に鶏胎児胚細胞で増殖させて弱毒化した。ワクチンはこれを、発育鶏卵に接種して作られている。

(2)ワクチン

日本で使用されているワクチンは、Aventis Pasteur社から輸入したものである。凍結乾燥品であり、使用直前に添付の生理食塩水に溶解して0.5mlを皮下注射する。黄熱ワクチンの接種が行われている施設は表1のごとくである。

(3)安全性情報-1-

歴史的・世界的に非常に副作用の少ない安全性の高いワクチンとして知られている。しかし、2001年CDCから、7例の重い副作用(6例が死亡)について、2001年ランセットにやはり4例(3例は死亡)の重大な副作用に関する報告がなされている。その臨床症状は、発熱・頭痛・筋痛症・肝機能障害・呼吸不全・意識障害(錯乱)・多臓器不全であった。

参考文献
  1. Notice to Readers: Fever, jaundice, and multiple organ system failure associated with 17D-derived Yellow Fever 
    vaccination, 1996-2000. MMWR 50: 643-645, 2001
  2. Michael Martin, Theodore Tsai, Bruce Cropp, Gwong-Jen J Chang et al.Fever and multisystem organ failure associated with
    17D-204 yellow fever vaccination: a report of four cases. a report of four cases. The Lancet. 358: 98-104, 2001

安全性情報-2-トリ白血病ウイルス遺伝子の混入に関して

(4)適用

黄熱の汚染地域を有する国に入国するときは、黄熱ワクチンの接種証明書を求められることがある。現在、接種が要求される国の情報は表2のごとくであるが、最新の情報は渡航前に国内の検疫所(表1)に問い合わせるとよい。

表1
検疫所 住所 電話
小樽検疫所 小樽市港町5-3(小樽港湾合同庁舎) 0134-23-4162
仙台検疫所 塩釜市貞山通り3-4-1(塩釜港湾合同庁舎) 022-367-8101
成田空港検疫所 成田市古込字古込1-1(第2旅客ターミナルビル) 0476-34-2310
東京検疫所 東京都江東青梅2-56(東京港湾合同庁舎8F) 03-3599-1515
横浜検疫所 横浜市中区海岸通1-1(横浜第2港湾合同庁舎) 045-201-4456
新潟検疫所 新潟市竜が島1-5-4(新潟港湾合同庁舎) 025-244-6569
名古屋検疫所 名古屋市港区築地町11-1 052-661-4131
大阪検疫所 大阪市港区築港4-10-3(大阪港湾合同庁舎) 06-6571-3522
関西空港検疫所 泉南郡田尻町泉州空港中1番地(関西空港CIQ合同庁舎) 0724-55-1282
神戸検疫所 神戸市兵庫区遠矢浜町1-1 078-672-9653
広島検疫所 広島市南区宇品海岸3-10-17(広島港湾合同庁舎) 082-251-1836
福岡検疫所 福岡市博多区沖浜町1-22(福岡港湾合同庁舎) 092-291-3585
福岡検疫所鹿児島検疫所支所 鹿児島市泉町18-2-31(鹿児島港湾合同庁舎) 099-222-8670
那覇検疫所 那覇市港町2-11-1(那覇港湾合同庁舎) 098-868-1674
日本検疫衛生協会    
横浜診療所 横浜市中区山下町2番地(産業貿易センタービル3F) 045-671-7041
東京診療所 東京都千代田区丸の内1-8-2(第一鉄鋼ビル5F) 03-3201-0848
その他の機関 その他検疫所以外でも接種可能な交通の便のよい場所に出張所などがあります。  
高槻予防接種センター
(大阪医科大学 共用会館内)
大阪府高槻市大学町2-7 06-6571-3522
国立仙台病院 仙台市宮城野区宮城野2-8-8 022-293-1111
表2.国内に黄熱汚染地域をもつ国(平成13年1月11日現在)
アフリカ アンゴラ、ベナン、ブルキナ・ファソ、カメルーン、ガボン、ガンビア、ガーナ、ギニア、リベリア、ナイジェリア、シエラレオネ、スーダン、コンゴ民主共和国(旧ザイール)、コートジボアール
南アメリカ ボリビア、ブラジル、コロンビア、エクアドル、仏領ギアナ、ペルー、ベネズエラ
  • 最近の黄熱情報:ブラジルでの黄熱流行 WHO/CSR

ブラジル保健省とWHOアメリカ諸国地域事務局は3月6日までに、Minas Gerais, Rondonia, Goias, Bahiaの4州で合計35人の患者(疑似患者も含む)を報告した。流行の中心は、Minas Geraisで6人の死亡者と5人の患者についてIgM ELISA等で確認されている。現在他の疑似症例についても検査中である。この地域への旅行者にはワクチン接種が勧告されている。

世界の黄熱発生状況(WHO発行Weekly Epidemiological Recordによる)
年次 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999
患者数 4336 2712 295 393 1439 974 424 190 303 208
死亡者数 410 751 102 117 491 247 223 89 117 101

ウイルス第一部 第2室
2002年12月5日 更新
高崎 智彦

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